『樹海迷路(じゅかいめいろ)』は、『神無迷路』の続編となるSFサスペンスノベルゲームです。
主人公とヒロインは前作から続投し、物語も明確に(導入部分から)地続きで展開します。没入感が大きく異なるので前作プレイ後がおすすめ。
今作は青いシルエットではなくなり、3Dキャラクターとなりました。かまいたちの夜の二番煎じでは終わらない、という心意気を感じられます。
今回も800円とは思えない高品質なクオリティを堪能できて非常に満足です。
プレイ時間:10.3時間
プラットフォーム:Steam

概要と紹介
本作は『神無迷路』の正統な続編にあたるノベルゲームです。
引き続き、主人公は波立良志(はりゅうりょうし)で、ヒロインは霜月時雨(しもつきしう)。
前作をプレイしなくても理解はできますが、明確に続編であるためやはりプレイしておいたほうが良いでしょう。導入部分での馴染み具合は読み進める気分や没入感に大きく影響しますからね。
前作にあった不気味さやシリアスさはそのままに、今作では明らかに「ふざけた要素」と「理解に骨の折れる複雑さ」が増しています。登場人物は総じてどこかおかしく、特に主人公の言動は常軌を逸していると感じる場面が目立ちました。
ビジュアル面では青いシルエット表現はなくなりましたが、演出や空気感はむしろ『かまいたちの夜』的なテイストがより強まっています。
前作を楽しめた方は、ぜひ本作『樹海迷路(じゅかいめいろ)』もプレイしましょう。
ストーリー全般について
メタ構造と物語のスケール
本作はメタ視点をはるかに超えた構成となっています。なんと、途中で主人公自身が『樹海迷路』をプレイしている場面が挿入されるのです。プレイヤーが困惑するように物語構造が意図的にねじられています。
さらに、科学的な視点や理屈を交えながら物語が進行するため、スケールは前作以上に壮大で、同時に晦渋な内容になっていました。
それでも物語の根幹は驚くほどシンプルです。主人公の目的は一貫しており、「このゲームをグッドエンディングでクリアすること」に尽きます。本筋が明快であるため、どれだけ展開が入り組んでも理解が追いつかなくなることはありません。
メタ視点は冷める要因になりがちな“おちゃらけた”要素なのですが、前作同様にそのふざけた部分を内包してしまえるところに、本作の魅力は凝縮されていると言えます。
科学的に証明できないから幽霊はいないと断言するよりも、いるかもしれないと思ったほうが楽しくなると考えているような、そんな寛容さを感じられますし、この意見に同調できる人ほど楽しめるでしょう。
主人公のもどかしさと意図的なフラストレーション
本作で通して強く感じるのは、徹底的なもどかしさです。
主人公はなかなか報われず、状況は悪化していくばかり。プレイヤー視点だと「もっと上手くやれるだろ」と思わざるを得ない場面が何度もあります。
記憶を引き継いでいるのなら説明すればいいのに、それをしません。前作の経験があるのだから、ヒロインの霜月は理解してくれるはずなのにも関わらずです。
その結果、仲違い、すれ違い、軋轢、嫌悪、憎悪、さらには殺意へと発展していきます。
あまりにも主人公が愚かに見える場面が多く、ここは好みが分かれる部分かもしれません。
しかしこのフラストレーションの蓄積は、明らかに意図的に設計されたもの。言葉で説明しない主人公の選択が、読んでいて苦しくなるほどの緊張感を生み出しています。
作為的な意思疎通の捻じ曲げは、ホラー作品ではありがちです。低予算のB級ホラー映画の場合、話の都合上、登場人物が突拍子もない言動をすることはしばしばあります。
本作がもし1作目だったら、それらB級ホラー映画と同じように「所詮インディーゲームか」と切り捨てていたかもしれません。このようにプレイヤーへのフラストレーションの押し付けは非常にリスキーですが、本作はそれを8割は上手く活用できていたと言えるでしょう。
あとの2割分は実に惜しかったです。カタルシスにより解放されるには、もどかしさ(主人公の馬鹿さ具合)が少し多すぎました。笑
人間関係とキャラ配置の弱さ
今作では人間関係の描写が全体的に甘く感じられました。登場人物は多いものの、物語上重要なキャラクターは少なく、ほとんどがギャグ要員のように見えてしまいます。
ヒロインである霜月も中盤ではほとんど登場せず、終盤で急に思いを告げられても感情が追いつきませんでした。ここは明らかにバランスを取り損ねている部分です。
前作がコンパクトにまとまっていたのに対し、本作は話を広げようとしたものの、広がりすぎることを恐れて最終的に手早く収束させたような印象を受けました。
主人公と霜月の関係を軸に物語を組み立ててほしかったところです。
たぶん主人公のおふざけに注力してしまったために、そうならなかったんでしょうね。この主人公に顔面に放屁されても文句を言わない霜月は女神かと思いましたよ。笑
根源を考えることの価値
本作で特に好印象だったのは、「人間とは何か」「何のために生きるのか」「死んだらどうなるのか」といった根源的な問いに真正面から向き合い、答えを出そうとする姿勢です。
答えのない問いに答えを出そうとする意識・意欲は、非常に好感が持てます。
フィクションってのはそのためにあるんだよ!と大いに賛同したくなります。
科学的な理屈や専門用語を持ち出し、もっともらしい根拠を提示しながらも、それが厳密に正しいかどうかは重要視していません。
全体を通して、魂を剥き出しにした慟哭のような物語になっています。
インディーゲームならではの作り手の表現欲求が前面に出た作品は、だから素晴らしいんですよね。
ただの“商品”に終わらない価値というものがこうやって現れている「作品」こそ評価されるべきです。
どうにもならない心の叫びを一つの作品としてまとめ上げている点に強い敬意と尊敬の念を抱きました。
ストーリー評価(中盤までの熱量と終盤の失速)
中盤までは、とてつもなく壮大な物語に感じられますが、終盤はやや尻すぼみな印象を受けました。
最終的な着地点は予想の範囲(ありふれた物語の範疇)に収まり、「やはりそこに落ち着くか」と感じさせるものに終わってしまいます。
主人公とヒロインが20歳程度の設定だとどうしてもそうなってしまうんですよね。一度逸脱したのなら、最後まで振り切ってほしいところ。凡人には不可能な境地に至ったのに、現実的な日常(一般庶民レベル)に戻るのはもったいない……。
根源的な問いへの熱量と深淵へ迫ろうとする気概を感じさせる本作ならではの踏み込みをもう一段見せてほしかったというのが正直な感想です。
中盤の外国人学者との問答は非常に面白く、あのレベルのやり取りが最後まで続く、かつ、それが物語に相乗効果をもたらすことができていれば、さらに強烈な作品になっていたでしょう。
とはいえ、続編を匂わせる描写もあり、次回作への期待を持たせる終わり方だったので、もしかすると、3作目を通じてそれらを詳らかにし、本シリーズ独自の「答え」を提示してくれるのかもしれません。
安価なインディーゲームにとどまらない価値を次作でも見せつけてほしいものです。
総評:『樹海迷路(じゅかいめいろ)』
本作『樹海迷路(じゅかいめいろ)』は、ストーリー展開への細かな不満はありながらも、総合的な満足度は非常に高い作品でした。
物語とテーマ性で勝負を仕掛けて混迷に誘いながらも、随所に挟まれるギャグ要素でプレイヤーをしっかり楽しませる点、登場人物全員フルボイスである点はもちろん、3Dモデルを使った新たな演出への試みも含めて、到底800円の領域ではありません。
クオリティも価格も本当に破格のゲームです。
インディーゲームならではの価値をはっきりと感じさせてくれる作品でした。次回作に期待大ですね。楽しみです。
以上、『樹海迷路(じゅかいめいろ)』のレビュー(感想と評価)でした。










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