『Post Trauma(ポストトラウマ)』(PS5)の感想と評価(レビュー)です。
本作は、謎解きがメイン、戦闘は少々に、難解なストーリーと、古き良き固定カメラ視点のサバイバルホラー。
サイレントヒルにインスパイアされた世界観は、システムは古くともビジュアル面で現代式にアップデートされており、懐かしさと新鮮さ両方を堪能できます。
プレイ時間は合計で8時間ほど。
価格も1,700円と良心的ですし、往年のサバイバルホラーファンはぜひプレイしてみてほしい作品となっています。
プレイ時間:8時間
プラットフォーム:PS5、Steam
ストーリー&世界観
主人公は腹の出た白髪の初老男性「ローマン」。
サバイバルできるのかどうか怪しい悲壮感と哀愁漂う様子が何とも親近感を抱かせます。よく泣きそうな顔するのもポイント高いです。ホラーゲームでこのタイプの主人公は珍しいのではないでしょうか。
物語はローマンが、“グルーム”というおぞましい異世界で目を覚ますところから始まります。
彼のひどく疲れた顔からは、過去に何かあったことは窺えますが、残念ながら詳細は誰一人として語ってくれません。訳の分からない状態のままグロテスクで不気味な世界を彷徨うこととなります。
世界観の構築は非常に完成度が高く、ビジュアル面ではサバイバルホラーにおいて完璧と言ってもいいほどです。
しかし、ストーリーはクリアしてもほぼ何も解明されません。情報が少なすぎて考察もほぼ不可能です。
とは言え、「分からないものを分からないまま受け入れる」ことのできる往年のホラーファンならすんなり受け入れられるでしょう。
あるいは、想像力を働かせる余地を残していると解釈することもできます。
なにせ明確に原因・要因が分かるのなら、トラウマにはなり得ませんから。
戦闘
ハンマーや拳銃、ショットガンがあるので、サバイバルホラー感は充分に味わえますが、戦闘についてはおまけです。
敵クリーチャーは合計で10体くらいしか出てこない上に、ショットガンを使えばボスも難なく倒せます。
個人的には、アクション的な忙しさが全くなく落ち着いてプレイできるのはむしろ高評価。
軍人でも何でもない一般人でメタボのローマンが俊敏に動いて重火器を駆使して何体もクリーチャーを屠っていくほうがおかしいですからね。
世界観的にも昔ながらのサバイバルホラー感を味わえる良いバランスだと思います。
と言いつつ、ローマンはなぜかバックステップだけは機敏な動きを見せてきます。
このギャップが親近感を抱かせる要因の一つでしょう。たぶん。
もう少しストーリーが長ければ、より魅力的な人物になっていたかもしれません。なぜか時折日本語を喋りますしね。なかなか惜しい存在です。
追加DLCなどで、ボリュームとストーリーの補足をしてくれないかな。
あと、短い間ですが、女子高生の「フレイヤ」を操作することができます。女子高生なので戦闘はまったくできせんが、ローマンの2倍速くらいで移動できるので非常に快適。おそらくローマンが遅すぎるだけ。
フレイヤの操作ターンがもう1回はあってほしかったかな。
怪物とバトルさせたいなら普通のセーラー服着てるような女子高生を主人公にしたらダメなんですよ。
海外(欧米)の人たちはここ辺りの分別は付いていますよね。子供は大人が守るものという倫理感がちゃんとあります。
フィクションとはいえ~を大事にするかどうかに、クリエイターの人間性・品性が大きく出ますからね。
その点で『f』には不安しかありません。
謎解き
サバイバルホラーの根幹、謎解き。本作も例に漏れず、謎解きがメインを占めます。
多くがメモ必須の謎解きのため、慣れていない人にとっては難しくて投げ出すくらいの難易度です。
ですが、専門知識が必要だったり情報量が足りなかったり、理不尽な謎解きは全くありません。
きっちり探索し必要な情報をスクショして周囲の情報から推測できればいずれ答えにたどり着けます。
最初の地下鉄(電車)で謎解きの方向性を掴んで慣れれば、あとは詰まることはないでしょう。(相応の思考時間は必要ですが)
以前にプレイした『Tormented Souls』の超難解な謎解きに比べれば、親切すぎるくらいでした。(あくまでTormented Soulsと比べれば)
10段階で謎解きの難易度を評価するなら、『Tormented Souls』は9、本作『Post Trauma』は3(最後のピン問題含めても)といったところ。
程良い感じに頭を使えるので、うまく謎が解けた時の快感も相まって、本作への評価はこの点でも高くなりました。まあ、ラスボス戦はもう少しどうにかしてほしかったですが。盛り上がり的に。

まとめ:『Post Trauma(ポストトラウマ)』
昨今のサバイバルホラー原点回帰の流れはとても良い風潮だと思います。
本作『Post Trauma』のような懐かしさ味わえるホラーを今なおプレイできるのは本当に嬉しい限り。
グラフィックがいくらキレイになろうが大規模に派手に作ろうが、そこはホラーの本質ではありません。
ホラーに必要なのは「安堵感」あるいは「癒し」なのです。そこに人は恐怖や刺激のみを求めている訳ではないのです。
これを理解していないと、お門違いな中途半端にアクション性のある理不尽に死にまくる過度な演出にまみれた意地の悪いゲームが出来上がってしまいます。
そしてそれを世界で売れているシリーズだからという理由だけで、実は大して面白くもないのに求めているものでもないのに、賞賛せざるを得ない世論が形成されるのです。
そうなればどうなるか。そのジャンルが寡占状態となり、衰退・崩壊していくのです。
リメイク・リマスターを繰り返し、似たような進歩のないシステム(≠古き良きシステム)で稼ぐことや話題性だけを重視したホラーはもはやホラーではありません。
そうならないよう、このサバイバルホラー原点回帰の流れを絶やさないように、これからもこうした作品を見つけ次第プレイという投資をしていきたいものです。
以上、『Post Trauma(ポストトラウマ)』のレビュー(感想と評価)でした。
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