SFサスペンスノベルゲーム『神無迷路』のレビューです。
青いシルエットに惹かれて思わず購入しましたが、予想をはるかに超える良作でした。これが500円とは信じられないほどの完成度。
青いシルエットと画面全体に文字が表示される画像に心動かされた方は迷うことなくプレイして損はなし。
以下、ネタバレなしで感想交え評価していきます。
プレイ時間:7.4時間
プラットフォーム:Steam
ノベルゲームとしての魅力
本作『神無迷路』においてまず目を引かれるのは、青いシルエットで描かれた人物像と、懐かしさを覚えるフォントです。画面全体に文字が表示されテキスト主体で進行することや、時折差し込まれるどこか頓珍漢な選択肢、頼りなさげな主人公の語り口まで含めて、往年の名作ノベルゲーム『かまいたちの夜』を強く彷彿とさせます。
そのため、かまいたちの夜をはじめ、サスペンス要素を含んだノベルゲームが好きな方は、間違いなく心を掴まれるはずです。単なるオマージュではなく、ノベルゲームというジャンルの「面白さ」をきちんと理解したうえで再構築している印象を受けました。
さらに驚かされるのは、本作がフルボイスである点です。登場人物のセリフすべてにボイスが付いており、臨場感を損なうことなく物語に没入できます。それでいて価格はわずか500円。いわゆるワンコインです。
この価格を知ったうえでプレイすると、「本当にこの値段でいいのか」と心配になるレベルのクオリティ。コスパが良いという言葉では表現しきれないほどの破格さです。
どんなゲームか
見た目や雰囲気から、かまいたちの夜のような純粋なミステリーゲームを想像するかもしれませんが、本作は少し方向性が異なります。ジャンルとしては、SFサスペンスと呼ぶのが最もしっくりくるでしょう(ミステリーと呼ぶには推理要素や伏線関連が足りない)。
一応、犯人を推理する要素はあります。しかし、文章を注意深く読み、正しい選択肢を選べば犯人に辿り着ける、といったタイプのゲームではありません。プレイヤーの推理力を試すというよりは、物語の構造そのものに触れていく体験が中心に据えられています。
物語は一度のプレイで完結するものではなく、いくつかのエンディングを迎えることで「鍵」を入手し、それによって本来は選べなかった選択肢が解放されていきます。そうして過去の選択に戻り、新たなルートを辿ることで、徐々に物語の真相へと近づいていく仕組みです。「周回すること」自体がゲームの核になっている点が特徴です。
ストーリーは難しめだが巧妙
ストーリーは疑似科学的な設定を含んだSF仕立てになっています。はじめに述べた通り、本作は推理力で犯人を言い当てるゲームではありません。その前提を理解していれば、物語そのものを素直に楽しめるはずです。
また、かまいたちの夜の持つ、どこかふざけた雰囲気や遊び心が好きだった方であれば、本作のテイストも同様に楽しめるでしょう。本作は、ノベルゲームで選択肢を選び、さまざまなエンディングに辿り着くという「行為」そのものを、物語の一部に組み込んでいます。
いわば、ノベルゲームの中で主人公がノベルゲームをしているかのような、作中作的な構造を持ったストーリーです。後半に進むにつれて話はやや難解になっていきますが、「ノベルゲームのシステムそのものを物語に落とし込んでいる」と捉えれば、比較的すんなり理解できるでしょう。仕組み自体が非常にユニークで、こんな発想は他に類を見ません。
一方で、その仕組みを明らかにしていくことにボリュームが割かれているため、主人公個人のドラマやキャラクター描写はやや薄めに感じられます。キャラクターに愛着が湧いてきた頃に物語が終わってしまう印象がありました。
しかし、この短いボリュームの中で、これだけ複雑な構造を破綻なくまとめきっている点は見事です。これが500円の作品とは到底思えません。もし日本一を名乗る某ゲーム会社が発売していたら、きっとフルプライスの8900円になっていたのではないか、と冗談半分に思ってしまいます。笑
特色:快適なノベルゲーム体験
本作で特に感心したのは、バッドエンディングや選択ミスのルートが決して無駄にならないよう、丁寧に設計されている点です。
ノベルゲームの中には、選択を誤ると即ゲームオーバーになり、徒労感だけが残る作品も少なくありません。しかし『神無迷路』では、いわゆる「失敗ルート」にも必ず意味があります。そこでしか得られない情報や視点があり、それらを積み重ねていくことで、最終的に真エンディングへと繋がっていくのです。
どの選択も決して無駄にはならないという設計思想は、プレイヤーにとって非常に心地良い効果をもたらします。選択すること自体に価値があり、遠回りに見えるルートも、すべてが真相解明のためのピースになっているためプレイに無駄が生まれません。
実は、こうした作りをきちんと実現できているノベルゲームは非常に少ないです。この点が、本作を「500円のノベルゲーム」という枠に収めてしまうのが惜しく感じられる最大の理由であり特色と言えます。
まとめ感想とインディーゲーム環境について
正直なところ、フルボイスでこの内容のゲームを500円で販売していること自体に強い興味を抱きました。漫画一冊よりも安い価格で、これだけの体験が得られるのですから。
これは、近年インディーゲーム開発の環境が整い、個人や小規模チームでも作品を世に出しやすくなっていることの恩恵と言えるでしょう。参入障壁が下がり、多くのクリエイターが挑戦できる環境になったことで、多種多様なゲームが低価格で楽しめるようになっています。
特にノベルゲームやホラーゲームは、アイデアと構成力次第で、低予算でも非常に面白い作品を生み出せるジャンルです。本作はその好例だと感じました。今後もこうした環境が続き、埋もれてしまうには惜しい良作が数多く世に出てくることを期待したいところです。
さて、本作をプレイし終えた今、続編『樹海迷路』も続けてプレイしてみようと思います。
青いシルエットに惹かれたなら
最後に。
スクショ画像の青いシルエットとフォントに惹かれたのであれば、迷う必要はありません。その直感は正しいです。秒で購入しても後悔はしないと断言しましょう。
世界観や雰囲気に少しでも心を掴まれたのであれば、本作は間違いなく楽しめます。ノベルゲーム(かまいたちの夜)が好きな方には、ぜひ手に取っていただきたい作品です。
以上、『神無迷路』のレビュー(感想と評価)でした。







コメント