『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』を全実績解除したのでレビュー。
本作は、昭和後期の東京・墨田区を舞台としたホラーミステリーアドベンチャーです。都市伝説系のホラーゲームやミステリー系ノベルゲームが好きな方には、グッとくる要素がこれでもかと盛り込まれています。
とは言いつつも、発売日に購入しておきながら2時間だけプレイして止めていました。今回、続編が発売されると知って初めから再プレイ。
題材は自分にベストマッチなのになぜ3年近くも積んでいたのか含めて、改めてプレイしての正直な感想と評価を書いていきます。
2,000円未満のゲームとしては非常に完成度の高いゲームですので、雰囲気やジャンル、キャラの立ち絵が好みの方は迷わず購入しましょう。
プレイ時間:14時間(全実績解除まで)
プラットフォーム:Steam、Switch
概要と全般的な感想
ごく普通の会社員・興家彰吾は、友人の福永葉子とともに、
深夜の錦糸堀公園で、地元では有名な怪談、《本所七不思議》について調べていた。
《蘇りの秘術》と関係するという葉子の話を半信半疑で聞き流していた興家だったが、
目の前で次々と奇妙なことが起こり始める‥‥。
時を同じくして、《本所七不思議》を追う人々がいた。
連続変死事件を追う刑事、クラスメイトの自殺事件の真相を求める女子高生、そして失った息子の復讐を誓う母親。
本所七不思議を中心にそれぞれの思惑が絡みあい、物語は凄惨な呪い合いへと発展していく。
あらすじを見るに非常に面白そうな期待感膨らむ作品であることが予想できます。実際これを見て発売日に購入した訳です。
正直、「とても良くできたゲーム」であることは間違いないのですが、私の想定する感覚を得られなかったというのが、3年近く積んでいた大きな理由でしょう。
日本のゲーム、かつ、定価2,000円未満であることを考慮すれば、十分に楽しめたと評価できます。
しかし、改めてプレイしても「もっと早くプレイすれば良かった」という3年積んでいたことに対する後悔は微塵もなく、むしろ2時間で放置していた理由が明白になりました。
いろいろな小説を読んできた方、ノベルゲームをたくさんプレイしてきた方はもしかすると同様の感想を抱くかもしれません。
ゲームとしては非常に良く出来ているので、その点では満足ですし、おすすめです。
続編発売で興味を持っている方はぜひプレイしてみてください。“素直”な心があれば楽しめるはずです。笑
とても「良くできた」ビジュアルノベル
以下、『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』の良くできた部分について紹介。
昭和後期の雰囲気が表現されたビジュアル
カラーテレビが普及してきた1970年代後半頃の雰囲気を表現した独特のビジュアルが魅力的です。特にメニュー画面は、ブラウン管テレビの湾曲した画面とざらざらとしたエフェクトが再現されており、レトロモダンな雰囲気を味わえます。このこだわり感じられるデザインはとても好きですね。本作では物語以外にもこうしたありそうでなかったデザインを楽しむことができます。
キャラの立ち絵
キャラクターの立ち絵が何種類もあり、表情や角度が細かく変わるのが工夫を感じられて良かったです。ノベルゲームでここまで見え方が意識されている作品は初めて見たかもしれません。普段は主人公視点で自分の姿が見えないのに、主人公の姿が見える立ち絵(シーン)が用意されているのにも理由があります。
キャラの輪郭が太い黒線で表現されているのが今風ではなく気に入りました。
360度カメラで撮影された「全天球背景デザイン」
訪れる場所を360度見渡せるシステムも特徴的。本当にそこに立っているかのような気分になれます。平面的になりがちなテキストアドベンチャーに立体要素があるのは新しいプレイ感覚でした。舞台をよく観察できるだけでなく、後ろを振り返らせるのをためらわせるシーンもあって、ホラー要素を楽しめる仕掛けにもなっています。
七不思議に絡めた呪いのアイデア
「本所七不思議」とストーリーが上手く絡み合って一つの形に融合していきます。バラバラと散らばっていた単なる都市伝説に思えた話が意味を持ち出すのは非常に良く出来ているなと思いました。また、七不思議それぞれに付随した呪いの効果も面白い点。七不思議ごとに呪殺手段が異なっていて、それらを予想するのは楽しかったです。
意外性のあるシステムの活用
ボイスが無いのにボイス音量を調整できたり、セーブの必要が無いのにセーブ機能があったりします。また、「案内人」という場外キャラが、主人公が呪い殺した人の数や現時点での話の理解度を訊いてきます。ゲーム側がメタ視点でのプレイを強要してくるのです。これらのシステムの活用は新しいなと感じました。本作のゲームとしての面白さとミステリー要素はここに集約されています。
このように本作『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』には、多数のユニークな楽しさと雰囲気を堪能できる良質なビジュアルがあります。
繰り返しになりますが、ホラー系ノベルアドベンチャーゲームが好きな方は楽しめるでしょう。
以下、ネタバレあり感想と評価
2時間だけプレイして3年近く放置し、再プレイでもハマれなかった理由
本作『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』は非常に良くできたゲームなのですが、残念ながら「良くできたゲーム」止まりです。その域を出ません。
本当に面白く感じたのであれば発売日に買っておきながらたった2時間で放置しませんからね。再プレイしてもやはり最後までハマることはありませんでした。
ここからは2,000円未満のゲームという前提(贔屓目)を除外して、作品としてどうだったのかをレビューします。
面白くなるまでが長すぎる&さして面白くならず終わる
まずはこれ。ボリュームが大きくないノベルゲームでありながら面白くなるまでが長すぎます。攻略に頼らずに普通に進めた場合の想定が12時間前後だとして、2時間プレイしても面白さを一切感じなかったのは致命的。プレイ意欲を減退させた最大要因です。
それどころか今回8時間を超えてようやく話が盛り上がってきたように感じました。4分の3プレイしてようやくです。その後すぐに物語は終わりを迎えます。真エンディングにやっとたどり着いたと思っても、そこから話が展開することはなく、エピローグだけです。後日談も何もありません。
文章の気味の悪さ
これは初めてプレイしたときに感じましたが、再プレイ時にも同様に感じました。文章がとにかく気味が悪いのです。ホラー要素的な気持ち悪さではありません。読みにくい文章ではないのですが、そこはかとないキモさが表れています。文章だけでなく、キャラのセリフも同じです。ラノベの軽佻浮薄さと、00年代の大衆小説の地の文が混ざり合ったような不気味さを感じます。特に刑事二人の会話はおぞましさすら抱きました。なぜこう感じたかについての要因は後述します。
あと、会話を進めるのに同じ選択肢を何度も何度も選ばないといけないのはとてつもなく面倒でした。オート機能の意味ないし、本当にダルかった。
キャラに魅力を感じられない
セリフの不気味さも相まって、キャラに魅力をほぼ感じられませんでした。ノベルゲームにおいて最後まで読み進めてもキャラが馴染んでこないのは、話の展開および構成、キャラ構築を大きく失敗していると言う他ありません。登場するキャラクターが新旧数多くの作品から表層だけをなぞって出てきたような人物ばかりだからでしょう。「こういうキャラ見たことあるよね」「だったら大体理解してあげられるよね」「だからそんなキャラ説明に時間割かないよ」という傲慢な印象を受けます。端的に言えば皆「浅い」のです。
おそらくこのゲームには、いや、このゲームにこそボイスが必要だと思います。最終盤(残り30分くらい)までまるでキャラが立体感を持って浮かび上がってこなかったですからね。「絵」は好きなんですけどね…(若い刑事のアヒル口を除いて)。まあ、プロタンくらいかなキャラとして良かったのは。
呪い行使の駆け引きがほとんどない
《蘇りの秘術》をめぐって“呪い合い”はほとんど起こりません。呪詛行使合戦による息もつけない駆け引きもほぼありません。相手の裏の裏を読むような心理戦なんてまるで発生しません。なぜなら、プレイ時間のほとんどが呪いの力を使えない昼間だからです。ずっと話を読み進めるだけの時間が続きます。まさか、呪いの使えない時間がこんなに長いとは思いませんでした。この点に関しては確実に誇大広告です。とてつもなく落胆しました。そこが一番楽しみにしていたところだったんですけどね…。
自由度のない物語
呪い合いの駆け引きがほぼ発生しないため、誰を殺すか殺さないか、何人現時点で生き残っているか、この時点で誰が生きていてそれがどう物語に影響するか、などの「分岐」が一切なく自由度のない1本道のストーリーになっています。予めストーリーの流れが決まっていて、プレイヤーは表面を辿っていくだけです。殺すべきでないタイミングで殺した場合、ゲームオーバーになってやり直すしかありません。プレイヤーの選択が意味を持たず、プレイヤーの介入余地は皆無です。よって、ストーリーチャートもほぼ意味を成していません。
これによりキャラクターは予定調和的な会話しか行わず、背景も深堀りされないので、ストーリー進行のための駒と化しています(これも魅力がない要因のひとつ)。
“本格謎解きホラーアドベンチャー”ではない
商品ページにはそう書いていますが、純粋な謎解き要素は3~4個のみです。しかもそのいずれもメタ視点を強要してきます。上のレビューではこのメタ視点の活用を新しいと感じたと書いていますが皮肉です。叙述トリックもののミステリー小説や映画に一切触れたことのない人にとっては、新鮮で斬新なのかもしれませんが、私にとってはただ萎える要素でしかありませんでした。序盤で興家がライターを捨てるくだりで大体察しがつきましたからね。「なぜだかわからないがそうしたくなった」で済まされるのは取り繕う説明として貧弱すぎです。それにそもそも、福永が“溺死”なのはダメでしょう笑。あと、人物リストをコンプリートした時に取得できる実績。あれは本当に余計でした。あの瞬間、黒幕が確定できてしまいましたしね。(まあ一応誤魔化すために直接登場しないキャラの顔も人物リストには載せられていたんでしょうけども)
薄い真エンディング
正直なところ、最初の興家ルートが一番面白く感じました。福永がアへ顔晒して死んだ時がピークだったかもしれません。選択肢次第でストーリーが変わるノベルゲームの良いところは、あとからいくらでも追加コンテンツを作れることです。人気が出たのであれば、別ルートを作ればいいのです。でも、本作にはそれがありません。それはなぜか。できないからです。真エンディング(正規ルート)の始まりをあんな序盤に持ってきたために、追加DLCを作れないのです。FILE24や23.5とかをゲーム内に盛り込めないんですよ。これは本当に致命的なミス。
マーケティング的にもそうですが、何よりこの真エンディングは登場人物たちが1日を通して積み上げたものを消し去っているのが問題。だから本作の真エンディングはとにかく薄いのです。印象にまるで残らない。「仕掛け」主体の一点突破型の物語は若年層には刺さるのかもしれませんが(その割に気持ち悪いのがダメなんですけどね…これは後述)。
単純に気に食わなかったところ
「これさえなければ」を見事にやらかしているために、ここまで本作の欠点やつまらないところを指摘することとなりました。これさえなければ、「安価な割によくできたゲームじゃん!まあ、物足りない部分もあるけど、楽しめたからOK!続編も買うか」と素直に評価して終わっていたでしょう。
そのやらかしとは、
“教師にレイプされる女子高生”を扱っていること。
これが私にとって絶対に擁護できない決定的欠陥、やらかしです。
日本人は凄惨な過去を演出するのに、軽々しくレイプを持ち出しすぎです。現実世界でできないから、憧れでもあるんでしょうか。というくらいに日本人はレイプが大好きですよね。陰鬱さや重厚さ、深淵さを物語に出すためにすぐレイプ頼み。レイプされた過去を持つ女性を出しさえすれば、それだけで世界観に大人向けの格式高さ・ダークな魅力(笑)が出るかと思ってるフシがあります。本当に気持ちが悪い。
女子高生が主人公の一人として、その友達も主要なキャラとして出てくる作品で、そして明らかに未成年も対象としたゲームでありながら、レイプされて(しかも担任教師に)、さらに轢き逃げされて死ぬ女子高生を登場させるとか……。正気の沙汰ではありませんよ。こんなの思いついてもストーリーに挿し込まねえよ普通。幽霊になって出てくるのはいいんですけど、“幽霊の扱い方”もヘタクソすぎですし。他のレビューでも書いた記憶がありますが、幼稚なくせに過激な要素は盛り込まれているのが本当に気に食わないんですよ。その手の作品が昨今はあまりにも多すぎる。
確かに、ホラーやミステリー作品では少なからずそうした事件は取り扱われます。でも、本作をはじめ昨今の拙い作品においては、そこに何の必然性も出せていません。他にもいくらでも事情は作れる中でレイプを選び、剰え何の救いもなくただの被害者で終わらせるというね…。これはダメ、これはヨシの線引き、要するに、モラル的な善悪の判断がまともにできてないように見受けられました。それでこの意見に対して、「所詮フィクションだよ。なに真剣になってんの?」とかほざく奴がいたら、私は「お前みたいなバカが褒めたたえるから、中身空っぽでつまらないだけでなく、気持ち悪い作品が増えてるんだろうが」と返したくなりますよ。
本作の真エンディングは“蘇りなんてできません。呪いもありません。だから、何も起こりませんでした”が結論。正直、阿呆かと思いました。一番初めのプレイ前の予想では、誰を蘇らせるか(&誰が生き残ったか)でエンディングが変わるかと思っていたのですが…(もちろん、誰も殺さないエンドと、“そして誰もいなくなった”エンドは必須)。大きく大きくあまりにも大きく下回る展開となりました。
しかもレイプだけでなく、実際に隅田川付近で起こったであろうバラバラ殺人事件を取り扱っていて、その犯人が登場しますからね。呪いや幽霊が平然と出てくる世界観なのに、リアルに殺人を犯している人間を登場させるのはどう考えても「違う」でしょう。そのうえ、この犯人だけ真エンディングでのうのうと生き残らせるのは論外すぎます。何人も生きたままバラバラにしておいて20年ごときで世に出てきて、警察と世間話なんかしてやがる。
レイプされた女子高生には何の救いもありません。その女子高生だけでなく、誘拐されて殺された子供、呪いで殺された警察官など、本編が始まる前に殺された人たちもそのままです。にもかかわらず、殺人鬼だけ普通に生活しています。いや、何のためのフィクションだよ。命(善悪)のバランスが取れてないんだよ、ほんと。
レイプや殺人は、呪い・幽霊などの曖昧で不明瞭で未知のものに対する恐怖ではなく、実存的恐怖や物理的脅威が混ざってくるため、この世界観においてひどく見当違いな存在です。あくまで呪いや都市伝説などフィクションで盛り上がっているところに、急に冷や水を浴びせられたような気分になりました。
良くも悪くも呪いは平等です。
年齢や性別、身体能力や社会的身分に関係なく、等しく発動するからです。
だから、最初から最後まで、呪詛行使のみの心理戦である必要がありました。女子高生を主人公の一人として出すのなら、なおさらそうでなくてはなりません。そこを分かっていないから、レイプさせたり殺人犯出したり、呪殺バトルもほとんどなく、善悪のバランスが取れていない、矛盾した浅く薄い物語が出来たのでしょう。
特に大きな矛盾点は、真エンディング中の主張、「人の世で蘇りなんてかつて一度も成功した事例はありません。だから君たちは今この瞬間を精一杯生きる必要があるのです」みたいな文言。いやいや、どの口が言ってるの?とツッコんでしまいましたよ笑。上にもう書いてますけど、女子高生をレイプさせて轢いて殺させておいて、人を殺しまくった殺人鬼は普通に生活してます。って、どう考えてもおかしいだろ。精一杯必死に生きていても、そういう頭のおかしい奴らに殺されたらそこで終わるんだよ!何言ってんの、ほんと、マジで……。
後述すると言った内容について
文章やセリフから感じた気味の悪さ、キャラの魅力の無さについては、上記の事柄で全部説明が付くと思います。開始2時間でこの気持ち悪さに気付いて中断したのは、まだまだ感性が腐ってないな、感覚の鋭さは残ってるな、と我ながら感心しました。この世の中で正常な感覚を維持し続けるのってかなりの精神力、忍耐力、意志の強さが必要ですからね。まだまともな感性を保持できていると確認できた意味では最後までプレイして良かったです。
そういえば、この気持ち悪さに酷似した感覚を味わった『AI:ソムニウムファイル』というゲームがありましたが、プレイが苦痛すぎて途中で止めましたね。あれはもう二度とやることはないでしょう。
これ以上は話が逸れるし他のレビューでも触れているので繰り返しませんが、やっぱり人間的感覚が欠如した社会になってるよなあ、と改めて思います。賞賛したらダメな人間を平気で賞賛する。賛同したらダメな考えに賛同する。皆がやっているから無思考で後に続く…。モラルのないバカが多数になった場合、民主主義って機能しないんですよ。政治的なことにはこのブログでは触れませんけどね。
終わり。
以上、『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』のレビュー(感想と評価)でした。
↓この話をゲーム内に入れろよと思った漫画。










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