インドネシア産サバイバルホラー『DreadOut2(ドレッドアウト2)』のレビュー(感想と評価)です。
本作は、ジャパニーズホラーの名作『零』に影響を受けた『DreadOut』の続編。前作に引き続き、主人公リンダはスマホを片手に霊や妖怪と戦います。
インディーホラーゲームの先駆けとなったDreadOutですが、残念ながら、前作から6年を経た続編にも関わらず、好意的に取れる進化・進歩はほぼ見受けられませんでした。インディーゲームの悪いところとホラーゲームの悪いところが凝縮された、8割9割が“クソゲー”要素で構成された作品となっています。
とはいえ、残りの1割2割にはパンドラの箱の底にあるような希望が残されているのも事実です。本レビューでは今後の期待を込めてその部分について書いていくこととします。
間違っても前作を楽しめなかった(魅力を感じなかった)プレイヤーは手を出してはいけません。
プレイ時間:10時間(プラチナトロフィー取得まで)
プラットフォーム:PS5
『DreadOut2』概要とあらすじ
パワーアップした接近戦と探索エリアの拡大によって、前作を凌駕するおぞましさと、背筋の凍るゾクゾク感を味わえる、新たな恐怖への幕開け
DreadOut2は三人称視点からなる、インドネシアの民謡や都市伝説からインスパイアされたホラーアクションゲームです。
主人公は前作同様、霊能力をもつ女子高生のリンダ・メリンダ。
除霊アイテムであるスマートフォンを駆使して、インドネシア特有の霊や妖怪から自分の生まれ故郷と、ひいてはこの世を脅かす闇の勢力と戦わなければいけません。
前作のホラー要素に加え、新たな接近戦や探索に重点をおいたストーリー展開は、背筋の凍る第二章の幕開けとなるでしょう。
この説明書きを見ると、いかにも面白そうな気がしますが、全くそんなことはありませんので要注意。商品説明に騙されてはいけません。
『零』に影響を受けた作品として1作目発売当時(2014年)は話題になりました。
しかし、続編である今作は2020年発売なのに、見事なまでに“クソゲー”化してしまっています。
しかも、終始イライラさせられるタイプのクソゲーです。
ゲームとしてはお世辞にも、いや、どうあがいても、褒めようがありません。どうしてこの状態で発売できたのかと言わざるを得ないレベルです。
前作をプレイした時には粗さや未熟さ含めて未来を感じたものですが、今作は古臭くて理不尽に難しい典型的な“インディー”ホラーとなってしまいました。
それでもなお、<ホラーゲーム>としては光る部分・独自の魅力(=希望)が残されているのは確かです。その点に着目すればプレイする価値があると言えるでしょう。
『DreadOut2』に残された希望とは?
リンダというキャラクター
主人公リンダは、神秘的な憂いと陰のある美しさを具えた少女です。
私がリンダに惹かれるのは、
多くを語らず内向的でありながら、意志の強さが垣間見える性格。
東南アジアのエキゾチックな雰囲気と日本の美人を象徴する要素を併せ持った容姿。
これらが<ホラーゲーム>という世界に絶妙に調和しているからでしょう。
今作ではさらに、女子高生に似つかわしくない艶のある美貌を湛えるほどに変化しました。
自分で雑にカットしたかのようなぼさぼさのショートヘアだからか、前作の悲惨な事件を経た影響か。また、前時代的な粗いグラフィックだからこそか。ゲームの良し悪し全部が、リンダというキャラクターの構築に奇跡的な配分で寄与しています。
DreadOutという作品の一番の功績はリンダを生み出したこと、と言っても過言ではありません。
リンダは、ホラーゲームの主人公として非常に完成度の高いキャラクターとなっています。
リンダが主人公じゃなかったら絶対に途中でやめてるよ、こんなクソゲー。
と思った方は私だけではないはず。
ホラーとしての世界観は随一
インドネシア特有の民話や伝承をもとにしているおかげか、ホラーとしての基盤は良く出来ています。
今作では街中を歩き回れるようになったこともあり、異国情緒あふれる趣をより堪能できるようになりました。馴染みのない土地、知り合いのいない街、人が大勢いるのに感じる孤独感も上手く表現されています。
各エリアのおどろおどろしいホラー表現、悲哀を含んだストーリー演出、霊と妖怪の不気味な造形など、世界観の構築は非常にすばらしいです。
過剰な感情表現が無いのもホラーゲームとしては評価できるポイント。
主人公リンダがあくまでプレイヤーの操作キャラとして存在しており、プレイヤーが能動的に心情を慮ることになります。主人公がプレイヤーの動きや物語の流れから乖離しないため、現実と混濁せず(邪魔せず)に自然にゲームそのものを体験できるのです。
キャラクターの感情を優先し動かすことで展開させていくストーリーだとこの感覚は味わえません。ホラーゲームでは特にそれが没入感を削ぐ致命的な欠点となり得ます。
本作の場合、インディーゲームにありがちな説明不足・表現技術不足が、上手く作用している好例と言えるでしょう(ホラーゲームでしか発生しない作用ですが)。
上記2点に着目すればプレイする価値あり
- リンダ(主人公)
- 世界観(舞台設定)
『DreadOut2』は、この2点に着目すればプレイする価値があると言えます。
大手の大規模なホラーゲームでもこれらを上手く構築できている作品は非常に少ないです。
お金をかければ良質なホラーゲームが作れる訳ではありません。
インディーホラーをたくさんプレイしている方ならこれは大いに同意できるでしょう。
逆に言えば、この2点が揃っているのに、なぜ本作は擁護のしようがない“クソゲー”になってしまったのでしょうか。本当に残念で残念で仕方がありません。
制作現場に私のようなホラーゲーム好きがいたら、確実にもっとまともなゲームになっていたのに、と考えてしまいます。これは自惚れではなく、誰がプレイしてもこれはおかしいと思えるレベルでゲームとして成立していませんからね。
とにかくもったいない。
この着目すべき2点をしっかり理解し、余程の覚悟を持った上でないと、このゲームに手を出してはいけません。
もしくは、ほぼすべてのホラーゲームをプレイし尽くして、なぜか偶然本作だけプレイしていなかったホラーゲームマニアの方の場合に限りおすすめします。
戦闘が悲惨すぎて“クソゲー”
『DreadOut2』が“クソゲー”なのは、とにかく戦闘が頭おかしくなるくらいの悲惨な出来だからです。
2014年発売の1作目がこれだったらかろうじて許せたかもしれませんが、本作は2020年発売の続編であるにもかかわらず大幅に劣化しています。
どうやったらこの戦闘システムでOKが出るんだ?開発現場は一体どうなってるんだよ!この戦闘に疑問を持つ人間はいなかったのか!?というレベルでイライラさせられます。
実際、罵詈雑言を叫び散らしながら戦闘を行いましたよ。それほどにひどい戦闘です。
まず、敵の当たり判定が極小。
理不尽とも呼べる一瞬のタイミングかつ特定の部位を狙って撮影する必要があります。でないと、敵にダメージが一切入りません。
次に、回避がない。
ステップやダッシュなどの回避行動がないので、狭い建物で複数の敵が詰め寄ってくると何もできずに死にます。狭くなくても単体であっても平気で起き攻め(ハメ殺し)をしてくるのでその場合もそのまま死にます。しかも今作はオートセーブしかありません。
それから、ボスの体力が非常に多い。
シビアな当たり判定位置を見つけ出し、回避行動もできない遅い動きで敵の攻撃を躱しつつ、的確なタイミングでの撮影を延々と繰り返さないと、ボスは倒せません。避け方をミスって隅に追いやられたり起き攻めを食らったりして死んだら、最初からまたやり直しです。
さらに、スマホと近接武器の併用ができない。
包丁や斧での近接戦闘も一部エリアでは可能ですが、そのエリアではスマホでの撮影ができず、スマホでの撮影ができるエリアでは近接攻撃ができません。おまけに近接攻撃にも爽快感は全くないです。なぜにこんな仕様にしたのだろう。
極めつけは、面白くない。
なんと言っても、戦闘が全然面白くないのが致命的。難しくてもやりがいのある戦闘とはまるで違います。スマホでの除霊に新鮮さを感じた2014年ならまだしも、現在にこのつまらない(という次元を超えたクソみたいな)戦いを強いられるのはもはや拷問です。
本作では唯一、後ろからの攻撃(バックスタブ)をするリンダのモーションを見ている時だけが癒しでした。
『3』で汚名返上なるか…
『DreadOut2』は、クソゲー部分を除けば概ね良質なホラーゲームです。
血まみれのリンダやインドネシア特有の世界観という本作でしか味わえない魅力があるのは間違いありません。
驚きなのは、続編の『3』が2026年に発売予定であること。
こんなクソゲーとしか言いようのない2作目を作ってしまっているのに、実に不思議です。
私のようなマニアックな人間が世界中にいるおかげでしょうか。
PVを見る限り『3』は大人になったリンダが主人公のようですね。
本作の反省を活かし戦闘が「まとも」になっていることを強く強く願います。
それこそ、パンドラの箱の底に残ったわずかな希望かもしれませんが。
以上、『DreadOut2(ドレッドアウト2)』のレビュー(感想と評価)でした。
































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