感想&評価『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk…』をレビュー~狂っているのはゲームか現実か、それとも…~

『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk…』感想評価レビュー

サイコロジカルホラービジュアルノベル『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk』の評価と感想です。

本作は、精神疾患を抱える少女の内面の葛藤をゲーム化した物語。
赤と黒基調の不安定なビジュアルと、狂ったようなテキスト、不気味さ際立つサウンドが特徴で、世界中に根強いファンがいるようです。

ちなみに、本作は続編で、『Milk inside a bag of milk inside a bag of milk』が1作目(前作)になります。
こちらの「inside」をプレイしてから本作「outside」をプレイしましょう(insideはプレイ時間60分程度)。Switch版はセットになっています。

なぜこんなゲームがSteamにおいて圧倒的に好評なのかは理解に苦しみますが、その「訳の分からなさ」を味わうゲームなのです(普通に見れば)。1作目、2作目通してのレビュー(という名の感想)を書いていきます。

人によっては、考察にも見えるかもしれません。

プレイ時間:3.5時間(全実績解除まで)
プラットフォーム:Steam、Switch

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「類を見ない」が高評価されるSteam

『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk…』一番不気味なシーン

先ほどなぜこのゲームが「圧倒的に好評」なのか理解に苦しむと書いたのは、ゲームに不満があるのではなく、このゲームを評価できる人間が多いことが理解できない(理解したくない)という意味です。

「精神状態がヤバい人、多すぎるでしょ!」笑

ゲーム画像を見ての通り、およそ正気の人間が作ったゲームとは思えません。
おそらく制作者も主人公と同様にメンタルに疾患を抱えたことがあり、その際の経験を基に作っているはずです。(素面でこんなゲーム作ってたら、「サイコパスの王」を名乗ってもいいくらい)

とは言え、プレイしてみると分かりますが、案外、ゲームの構造は理知的であることが分かります。

何らかの出来事で精神を病み、普通ではない状態になったものの、
人間を逸脱しきれないことに弱さを感じている。
いっそのこと突き抜けて狂おうとしたものの、結局、臆病にも立ち止まってしまっている。

狂いたいのに、狂えない。
狂っていないのに、普通ではない。

だったら、私は一体何なのか……。この苦しさは……。
私が弱いだけ……?

元に戻れないのなら、やっぱり狂おう…。
いや、できない……。

そんな葛藤を無制限に無期限に繰り返し続ける。無意識に脳みその中を支配し続ける。
正気が残っているが故の、逸脱しきれないが故の、苦悩。

これらを上手くゲームとして作り上げ、表現しているのです。
「理知的」でなければこの構築は不可能ですし、本当に狂っていてはそもそもゲームとして世に出せませんからね。

この他に類を見ないゲームが評価されているSteamは本当にプレイヤー層が幅広いなと思います。

私は、頭のイカれたキャラクターが好きですし、何よりもそれが論理的に組み立てられていることに強い魅力を感じる人間です。だから、本作もわざわざレビューを書くほどに魅力を感じたわけですが、いや、世界中で評価されたらダメでしょうと思います。笑

それくらい世界中の人間が病んでいるってことなんでしょうね。
このまま資本主義社会が続くなら、確実に全員病みます。
そして、「狂った世界で正気を保つ者は、狂人と呼ばれる」世界になります。

狂ったもの勝ちの世界はもう目の前。
みんなも手遅れになる前にさっさと狂おう。
狂わないと苦しいだけだぜ?

まあ私は、この世界の狂いっぷりを最後の最後まで楽しめるよう「正気」を保ち続けますがね。

主人公のビジュアルが見せる「現実」

『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk…』主人公

主人公。通称「milkちゃん」

名前のない本作の主人公。
ファンの間では「milkちゃん」と呼ばれているらしいですが、「結局そこかあ~、そうなるよな~」と思いました。

そう、結局、かわいい少女なんですよ。
世界中の人間が病んでいるからこそ高評価、だと上述したばかりですが、実際のところは、主人公の容姿や境遇が庇護欲(&支配欲)を誘うものだから、なんですよ。

単純に狂った世界に適合できずに病む。こっちのほうが何倍もマシです。
現実は、オタクどもの性欲によって、下駄を履かされているだけなんですよ。本作の高評価の半分以上はそれが要因、と断言します。

でなければ、わざわざこんなゲームのキャラクターに「milkちゃん」なんて呼称は付けません。
真に主人公の心情を慮るのであれば、このような「愛情」の示し方はできないはずです。
リアル世界で主人公のように苦しんでいる人間はたくさんいるのですから。

もし、主人公がブサイクなデブだったら?さらには男だったら?
「ぶっさ、引きこもりクソヒキニートはさっさと働けよ」世界中のゲーマーがそんな反応だったと思います。いや、そもそも話題にすら上がらないでしょう。

これが現実。
だから狂っている。
正気であるほど狂っていく。でも狂えないから苦しむ。

つまり、まるで愛玩具かのように主人公を見て、的外れな観点からの高評価をする人間(あるいは、このゲームに触れていること自体に特別感を抱いているような浅薄な人間)の存在こそが、本作の主人公のような人間を生み出しているのです。

そこに気づけないのが、あまりにも浅はかすぎます。
理知的からは遠く遠くかけ離れています。
比べれば本作の主人公のほうがよっぽど「正気」です。

ですので、このゲームを楽しめなかった方は、それでいいのです。
素直にそのまま面白くなかったと言えばいいのです。
それはあなたが正気な証拠ですから。

ああ、これと同じような理由でおそらく、『みいちゃんと山田さん』の「みいちゃん」が話題になっているのでしょう。作者は超絶理知的なはずです。大衆心理を見事に掌握していなければあのキャラは作れません。

まあその漫画は私は1話しか読んでいないんですけどね。なぜなら、1話読んだだけでその先を全く楽しめないことが容易に分かるくらいには「正気」ですから。

胎内を感じる心地よいBGM

『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk…』エンディング一部

赤と黒基調の異常なビジュアルが際立つ本作ですが、BGM・SE(音楽)も結構クセになるような仕掛けが施されています。

耳鳴りのような「ブウン、ブゥン、ブン、ブン、ブー……」という音が鳴り続けるシーンでは、目を閉じて聞いていたところ、そのまま眠ってしまいました。
一見不気味で不快なサウンドでありながら、おそらく胎内回帰願望を刺激するような音の調整が巧妙になされています。

テキストが流れる音もなかなかに心地良いです。
昔のRPGでよくあったボイスがないからこその工夫。それを本作は、包丁で野菜を切る音や波が打ち寄せる音などのASMRに似た「快感」に仕立て上げています。

そのおかげで、エンディング回収でクリックを連打するときでさえ、心地良さを味わえました。

『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk…』鏡のシーンは好き

本作は、エンディングが5つあります。
別にどれも大差ないんですけど、ラストの鏡に映る顔が毎回変わるシーンは必見です。

あの演出は神がかっていると言ってもいいでしょう。
正直、あの鏡の演出のテイストで全編やっていたほうが私はゲームとしては好きになっていたと思います。あそこだけ確実に「逸脱」できていますからね。

まとめ:常識・普通という精神疾患

『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk…』これだとただの美少女

『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk…』は、世界を取り巻く人間心理を鏡写しにしているゲームだと言えます。

現実の中に、このゲームがあり、そのゲームの中にも現実があって、またその現実の中に、このゲームがある。さらにそのゲームの中に……。
そして、この構造を鏡に映すと、もはやどちらが内か外か、現実かゲームか分からない……。
自分が立っているのはどこだ…?

制作者は非常に理知的です。
主人公も基本的に逸脱できていません。

だから、私はこのゲームを理解できたのだと思います。
この世界観(精神状態)が格別おかしいとは思えなかったのです。

本当に頭イッちゃってる人間はこんな比ではありません。
脳内をゲーム化なんて無理です。文章化も映像化も絶対に無理です。

が、しかし。
このゲームのポイントはここからです。

その本当に頭イッちゃってる人間からしたら、常識や普通を解しているとされている私たちこそがそうなのでは?

これが「inside」と「outside」の逆転。あるいは捻転。
鏡写し。あるいは、実像そのもの。
境界線の消滅。あるいは、再結合。

主人公は狂っている?そんな訳ありません。

だって、本当に真っ当に狂えているのなら、涙さえ流せないんですよ。


以上、『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk…』のレビュー(評価&感想)でした。


↓興味を持った方は、insideからぜひプレイしてみてください。

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