短編ホラーノベル『恐怖夜話』(きょうふやわ)の感想と評価です。
1時間ほどですべて読み終えられる200円のゲームなので、レビューを書こうか迷いましたが、日本人の方が一人で制作されたゲームだということで、応援の意味を込めて書くことにしました。
また、1時間という短い時間の中で、ホラーならではの悲哀が過不足なく含まれたストーリーが、シンプルながらも私の昨今求める「ホラー」の在り方に近いと感じたのも、やはり書くべきだと思った理由です。
興味を持った方はぜひプレイしてみましょう。
プレイ時間:1時間
プラットフォーム:Steam
ちょっとした作品紹介と感想
『恐怖夜話』は、 約1時間で濃厚な恐怖を味わえる、短編サイコロジカルホラーノベルです。
まず目に入るのが『学校であった怖い話』風のビジュアル。それを彷彿とさせる縦書きのテキスト。それから「先生」の不気味な笑顔。そして、夏の蒸し暑い夜を思わせる雰囲気。平成初期のかおり。
これ以上の説明は不要でしょう。怪談系のホラーノベルが好きな方は、平日の夜でもサクッと読めるボリュームですし、さっさとプレイするのが良いと思います。
間違っても動画サイトの実況で「消費」したらダメですよ?
許可云々の話ではなく、ゲーマーとしてのモラルの問題です。
さて、ここからは感想になります。
私がプレイするゲームの都合上、これまでホラー系作品のレビューを数多く書いてきました。
それらレビューの中で、特にここ数年「ホラー」の在り方についての嘆きを書くことが非常に増えています。
通常、ホラーに対して特別な思いを持っていることは稀だと思いますので、その嘆きはホラー好きによる変人の戯言だと思ってくれてよいです。というより、ほとんどの人にとって理解不能なことを書いているでしょう。
でも当然ですが、間違っているとは思っていません。
(作品の系統としての)ホラーとは、グロテスクな映像やショッキングな展開で、観る人を不快にさせるだけものではないのです。過剰な演出でビックリさせて悦に浸るためのものでもありません。
精神異常者であることを誇りに思っているかのような、人間性から遠くかけ離れた露悪的な演出を礼賛する「ホラー好き」は枚挙に暇がないですが、それらは三流四流もしくは、ただのニワカです。
なぜそう言えるのか。
人間が根源的に備えている恐怖という感情に真っ当に向き合えていないからです。
ホラーに触れているのに、恐怖について考えていない……。著しい矛盾です。
人が地球に生まれてからこれまで恐怖という感情を失ったことはありません。
生きるのに必要なものであることは明白です。そう考えると、「ホラー」も生きるうえでなくてはならないものということになります。恐怖=ホラーですからね。
喜怒哀楽とホラー
ここで『恐怖夜話』の話に戻ります。
冒頭で「ホラーならではの悲哀」について触れました。それは本作に、きちんと本来の「ホラー」を分かっていないと成しえない結末が描かれているからです。
ホラーはすなわち感情ですから、喜怒哀楽と密接に関りがあります。
例えば、それが「喜」や「楽」に寄りすぎると、コメディタッチのゾンビホラーものに、「怒」に偏ると、パニックホラーものになるでしょう。
では、本作が「哀」ばかりが描かれているかというとそんなことはありません。
1時間という短い時間の中で、喜怒哀楽がバランス良く配分されているのです。
ほとんどのホラーが「哀」を忘れがちです。何より人間への「愛」を。
『恐怖夜話』は、ホラーノベルゲームとして、格別な何かがある訳ではありません。
しかし私は、昨今の世の中から薄れかかっているホラー独自の愛を見つけられたので、これぞ求めていたものだと満足しています。価格・時間以上の充足感を得られました。
ぜひ次回作では、ボリューミーな作者独自のホラーの世界を見せてほしいと思います。
怪談系ホラー漫画について
最近、怪談系ホラー漫画が充実している気がします。続刊中のものをいくつか紹介しましょう。
完結した漫画(かつ気に入った漫画)しかレビューは書かないようにしているので、紹介にとどめます。
『恐怖夜話』系統が好きな方はこちらの漫画も大いに楽しめるのではないでしょうか。
『写らナイんです』
コメディ、ギャグ寄りのホラー漫画。“超霊媒体質”の主人公と、“超霊「避」体質”のヒロインの組み合わせが、なんかこう今風に言うと、エモい。非常に好きなテイストの漫画です。ぜひアニメ化してほしい。
『都市伝説先輩』
これはコメディ漫画です。ほぼホラーではありません。でも好き。タイトル通り、「先輩」のおかげで都市伝説にまつわる怪異が多数登場します。ただし、3巻で面白さの雲行きが怪しくなってきたような気も…。とりあえず1巻だけでもおすすめ。
『訳アリ心霊マンション』
これはコメディとホラーが良いバランスの漫画。幽霊や怪異を通して人間も描かれています。マンションの大家である主人公の人間性には、ハッとさせられることが多いです。1巻はプライムリーディングで読めますのでどうぞ。
『ニクバミホネギシミ』
これは上3作と違ってガチホラー寄り。この得も言われぬ不気味さ、気持ち悪さを描けるのは実にすばらしい。「“ニクバミホネギシミ”って何!?」って思った方はぜひ。こちらもプライムリーディングで1巻が読めます。
ホラーの懐の広さ
改めて考えると、ホラーってコメディと相性が良いんですよね。ミステリーやサスペンスは当然ながら、バトルものやラブロマンスとも合いますし、基本的に何でも組み合わせられます。
(唯一例外はスポーツくらいか?いや、生首を蹴り飛ばすサッカーの話があったような…)
ホラーはフィクション界のカレーなのかもしれません。素材の種類と調理の仕方で無限に形(味)を変えられます。懐が非常に広い。それが私の好きな理由でしょう。カレーも好きですし。
怪談系ホラー漫画が充実しているということは、それだけ需要があるということです。
そしてその中に人々が求めているものは何でしょうか。恐怖?グロテスクさ?ビックリシーン?それもあるでしょう。
しかし、それは本質ではありません。人々は、(無意識的にも意識的にも)人間理解と存在価値・意義の証明を求めているのです。
作品の盛衰は、その時代の人の心を反映します。
こうしたホラー漫画やインディーホラーゲームが盛り上がっているのは嬉しい限りですが、単なる娯楽として消費されてほしくはありません。
なぜ今この作品が人気なのか、どうして話題に上がっているのか、似たジャンルが増えているのかを考えると、より深く作品を楽しめるでしょう。
たった1時間の『恐怖夜話』はまさにそう。
その1時間の中から何を見出せるのかはプレイする人の心に左右されます。
ホラーに“何か”を求めている方は、『恐怖夜話』をプレイしてみましょう。おすすめです。
以上、『恐怖夜話』のレビュー(感想と評価)でした。







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