『SILENT HILL 2(サイレントヒル2)』(PS5)を長い時間をかけてようやくエンディングまで到達したのでレビュー。
このためにPS5を買っておいたというくらいに待ち望んでいたリメイクですが、発売日に買っておきながら紆余曲折ありクリアまで1年近くかかってしまいました。その理由を交えつつ、感想(評価)を綴っていきます。
サイレントヒルに影響を受けたゲームが乱立される中、本家本元の質量はやはり別格だと確信できた次第です。
いるかわかりませんが、ゲームとしてわくわく楽しんでプレイできたよ、という方は本レビューを読まないほうが良いかもしれません。
プレイ時間:17時間(Normalで1周)
プラットフォーム:PS5、Steam
最高の映像美とサウンド
まず特筆すべきは、グラフィックの美麗さ。最初の駐車場で軽く茫然としてしまったほどです。これでこのグラフィックで裏世界とかどうなるんだろうと。サイレントヒルの世界観を現代技術に合わせ進歩させるリメイクの目的としては、この時点で達成しています。うち寂れた街並、降り積もった埃、壁に飛び散った血飛沫、錆び付いた金網…etc.どれも最高級でした。
それから、音楽(サウンド)も素晴らしいです。リメイク用にアレンジされた心に染み入る、あるいは、恐怖と嫌悪感を極限まで引き出すBGMたち。さらに、クリーチャーたちの呻き声、鉄パイプで殴る音、肉がひしゃげる感触は、ヘッドホンで堪能すると、生々しさが際立ち、吐き気を催してくるほどでした。
これだけのものが揃っておきながら、発売日に買うほど期待しておきながら、なぜクリアまで1年近くもかかってしまったのでしょうか。それは私が『SILENT HILL 2』というゲームを著しく誤認・誤解していたからです。
固定観念に囚われず、率直な感想を書き記すことによって、ようやく最近、本作『SILENT HILL 2』がどういうゲームなのか見えてきました。
今なら断言できます。『SILENT HILL 2』はホラーゲームではありません。
以下より、その考えに至った経緯と、『SILENT HILL 2』の正体について自分なりの考えを詳らかにできたらと思います。
『SILENT HILL 2』の正体
謎解きの導線が悪い
本作サイレントヒル2リメイクは、謎解きとアイテムとの連動性が非常に薄いです。
オリジナルもそうだったかどうかは今となってはもう思い出せませんが、本リメイク版では謎解きと謎解きの間で詰まることが多々ありました。
謎解き自体は全く難しくないのに、あっさり何の問題もなく解けてしまうのに、謎解きをする場所に到達できなかったり、謎解きをするためのアイテムが手に入りにくかったり、という場面に何度も出くわします。
大して頭を使うほどの謎解きがないのも問題です。謎解きが数多く含まれているゲームでありながら、謎を解いた時の達成感がまるで足りません。
もちろん難易度をHardにすればとんでもない難しさになるのでしょう。サイレントヒルは確かそうだったはず。
とはいえ当然、謎解きが難しければ難しいほど良いと言っている訳ではありません。
難易度Normalが制作者の想定するサイレントヒル2なのだからそれは今考えるべきことではないでしょう。
とにかく本作は、明らかに謎解きがゲームの動きと連動していないのです。
ジェイムスの反応が全くないのも謎解きのつまらなさに影響しています。
ジェイムスが何の感情も見せないために、プレイヤーが「まあ、そういうことなんだろうな」と察してあげないといけない部分が多すぎです。謎解きポイントを見たのであれば「鍵が必要だ」「指輪をはめられそうだ」など、謎解き用のアイテムを手に入れたのであれば「あの部屋で使えそうだ」「あの廊下の扉を開けられそうだ」などのリアクションはすべきだし、明らかなヒントでなくとも何か一言くらいは発するべきだと思います。
謎解きの土台とそこで使う謎解きアイテムが流れとして乖離しているのに加え、何も誘導が行われず頭にはてなが浮かんだまま、とりあえず進めていく状態がずっと続くのです。
謎解きをする目的と導線が不明瞭なせいで、プレイヤーは明確な根拠なしにうろうろしないといけないパターンが何度も繰り返されます。
ようやく鍵や道具を集めて、重要なアイテムが手に入るかと思ったら、ただストーリー進行のフラグでしかなかった時には、ものすごい徒労感に精神が蝕まれました。しかも、それが頻繁にあります。
そのため、没入感が著しく下がっているのです。ジェイムスがずっと「他人」なのです。
そして、この謎解きの導線の悪さは、次の「プレイしていて疲れる」につながってしまっています。
プレイしていて疲れる
元より『SILENT HILL 2』にアクション的な面白さは期待していません。
ストーリーもある程度そういうものだと知っているし、爽快感を求めるようなゲームではないと分かっています。しかし、所詮思い出補正だったのでしょうか。プレイしていてとにかく疲れます。
謎解きだけでなく、物語さえあまりにも脈絡がありません。ほぼ初見感覚でプレイしていますが、これでは物語の先を見たくなる推進力がまったく足りないです。
敵の種類が少ない割に、戦闘が異様に多いのも拍車をかけます。何のために異形のクリーチャーを何体も殴り殺してるのか意味不明です。
爽快感を味わえるとすれば唯一、バブルヘッドナースを何度も踏みつけている時くらいのもの。
敵との戦闘がこんなにも多いのであれば、回避できないと回復薬がすぐに足りなくなるくらいのアクション性を付け足すのであれば、少なくとも「しゃがみ」と「スニークキル」は必要でした。この2つの要素があれば1年もかかることなく確実に楽しめたはず。
謎解きに関してだけならまだしも、物語そのものでもジェイムスの反応が少なすぎるのも問題。
マリアが殺されてもその程度リアクション?メアリー以外はどうでもいいのか?
メンタルがすでに死んでいるにしても人間味が薄すぎます。感情移入しにくいのです。操作キャラとして、主人公として。
メンタル死んでるかと思えば、ローラを探したり、エディーを慰めたり、そんなことやってる場合じゃないだろ?という行動が多く、物語がとっ散らかっている印象を受けます。
マリアへの反応を見るに、ジェイムスは親切心でそうしている訳でもないと分かりますし。
オリジナル版プレイヤーはジェイムスのこととか、世界観のつくりとか、それら事情を知っているから「このグラフィックでここまで再現し進化させるとかホントすごいなあ名作確定だわ」とか思えるのかもしれませんが、ちょっと待ってほしい。
初見プレイヤーをおざなりにしすぎです。
初見でジェイムスが何者かも知らずに果たして、物語に没入できますか?いや、これでは到底できないはずです。オリジナル版プレイヤーである私ですら「何だかな~、何か面白くないんだよな」と感じてしまうほどですから。
この要因をまとめると以下4点に集約されるでしょう。
- ジェイムスの反応がない(薄い)
- ストーリーと呼べるほどの導線が無い
- 謎解きが他から浮遊している
- 敵クリーチャーが無駄に多すぎ
そして何より…
訳の分からないまま進ませる状態が長すぎる
こんな鬱屈とした暗澹たる世界に、放り出されたプレイヤーのメンタルへの気遣いが何もありません。
この圧迫感を抱き続けたまま反応の薄いジェイムスを操作し続けるのは正直言って苦痛です。
銃弾は節約しないといけないからぶっぱなす楽しみもない。
誰かを助けるヒロイック的な面もない。
アクション的な面白さも何もない。
ジェイムスがどんどん強くなっていくような楽しみもない。
ユーモア要素なんか欠片も感じられない。
どいつもこいつも何言ってるか分からないし「人間味」を感じられるシーンが一つもありません。
そのままそんな状態のまま、ずうっと、汚いキモいグロいクリーチャーのそぞろ歩く街を彷徨わないといけません。
こんなので面白い訳がないでしょう。楽しめる訳がないでしょう。
ただただ疲れるだけです。
エンディングですべてこの苦痛が解消されて晴れやかな気持ちで終われるか?
この物語にそんなことあるはずがありません。
しかし…
それが『SILENT HILL 2』である
これが『SILENT HILL 2』の正真正銘の存在意義なのです。
昔からバイオと対比して、バイオが「動」のホラーなら、サイレントヒルは「静」のホラーだと言われてきました。
やはりこの現代の美麗グラフィックでそれを再現されると、割と本気でメンタルを抉り取られます。慣れていてもぐったりしてしまうくらいの重苦しさ。
『メンタルを抉り取ってくる』
この感じがまさしくサイレントヒルです。
ゲームとしては格別難しい部分はありません。
が、先に進むことを躊躇われます。プレイしていること自体が苦痛に思えてきます。
もう嫌だ、いやだ、こんな状態から解放されたい!早くサイレントヒルから出たい!という気持ちになってきます。
その感情を味わうこと、それこそがサイレントヒルを堪能している証なのです。
ゲームとしてのおもしろさ?
…そんなものないよ
プレイヤーを物語へ没入させるための親切心?
…そんなものないよ
プレイヤーの感情を慮ったストーリー展開?
…そんなものないよ
血と錆と闇に覆われた悪夢の中でじっとずっと。
「醒めることのない悪夢?それを現実と言うんだよ」と諭されるかのように。
訳も分からないまま彷徨いまくること、意味不明な世界でもがき続けること。
重苦しい恐怖、耐え難い重圧感、息が詰まる閉塞感。
…これが『SILENT HILL 2』の正体なのです。
私はサイレントヒルというゲームの在り方を著しく誤認・誤解しており、普通のホラーゲームと同じような視点で始めてしまいました。そのせいで、この正体を忘れていたために、クリアまで1年近くもかかってしまったようです。
もはや『SILENT HILL 2』はホラーゲームではありません。精神を抉り取る拷問装置と言うべきでしょう。
これからプレイする方へ サイレントヒルを知らない方へ
本作は、ホラー作品に慣れている人間でも、メンタル状況が危ういとプレイする気力をなくすほどの質量を持つ、ということを理解しておくべきです。
でないと、「真に」楽しめなくなります。これこそがサイレントヒルなのだと分かっていればいくらか先に進む原動力となるでしょう。
実際、正直、このグラフィックのサイレントヒルにいるのは疲れました。
この先行き不透明な世の中でこんなゲームをするのはただのマゾヒストですよ。そうに違いありません。
現実でもフィクションでも、鬱屈した状況が続くなんて避けようとするのが本能ですから。
しかし、メンタルを抉り取られることに快感を覚えるようになれば、その時は立派なホラーマイスターと言えるのでしょうね。
その点、私はまだまだだったようです。
泥沼の中でもがき続け、水面目指してあがくような生き方を現実でもやっているせいで、ちょっとばかし、今作は重すぎました。ひどく疲れ果てました。
さすがに、初めてプレイした初代サイレントヒルの学校ステージのような気分の悪さを味わうことはありませんでしたが、それにしても、いくら何でもいろいろ暗すぎ。笑
まとめと今後の展望
『SILENT HILL 2』はこれでいいとして、今後発売する作品が全部これではさすがにプレイヤーが離れます。新規プレイヤーも根付かないでしょう。(本作を初見で楽しめた人はすごい!)
だから、fでは女子高生主人公という清涼剤を混ぜ、アクションを魅せる方向の作品として出すのは英断だと思われます。もっと陰鬱かもしれないですが笑。
それから、映画サイレントヒル1作目を監督した人の新作も公開するらしいです。PV観たところアクション要素もありそうな感じ。
本作の感想をまとめると、
ヘザーが主人公の3がサイレントヒルの中ではやっぱり一番好きだなと改めて思いました。笑
2は重苦しすぎます。それを快感として浸れる境地に私はまだ到達していませんでした。
3のヘザービームを久しぶりに見たくなりましたもの。あと、サイレントヒルのうた。
まあ、本作もクリア後はユーモアあるエンディングが用意されているのでしょうけど、オリジナルは5~6時間くらいで終わるボリュームだったからよかったものの、初見で15時間overが想定されているボリュームで、この「重さ」は正直、プレイしていてツラ過ぎました。うーん、2周目に行く気力が湧かない!
サイレントヒルに影響を受けたゲームが特にインディーで増えていてそれらもそこそこの数プレイしていますが、やはり本家本元の質量は別格でしたね。
fと映画は非常に楽しみです。
さすがに本作ほど重くないでしょうし。笑
(fはセーラー服の女子高生を主人公にしてしまう感性を不安に感じていますけどね)
途中でも触れましたが、「しゃがみ」と「スニークキル」は必須だったよなあと思います。それさえあれば、ほんとに…。
以上、『SILENT HILL 2(サイレントヒル2)』のレビュー(感想と評価)でした。

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