感想『サイレントヒル』~それは、理想的なホラー映画のかたち~

映画『サイレントヒル』感想評価レビュー

好きな映画TOP5に入る映画の1つ『サイレントヒル』

世界的に人気のホラーゲームである「サイレントヒル」の実写化作品です。

中学生の時に、原作ゲームが好きだったので観てみましたが、凄まじい衝撃を受けたのを覚えています。
この作品がいろんなホラー作品に触れるきっかけとなったのは間違いありません。

映画サイレントヒルはゲーム原作作品としてだけでなく、映画単体でも非常に完成度が高いです。

原作ゲームが好きな方はもちろん、すべてのホラー好きにおすすめしたい映画となっています。

では、以下に(極力ネタバレなしの)感想をまとめました。
Amazonプライムビデオで無料視聴できるので、興味のある方はぜひ。

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実写化映画すべてのお手本


「漫画や小説、ゲーム作品を実写化するなら、サイレントヒルをお手本にしろ」

そう言いたくなるくらいの完成度をサイレントヒルは誇っています。
原作に「忠実」ではなく「誠実」であることが何よりすばらしいポイント。

実写化をことごとくミスりまくっている世の監督たちはサイレントヒルを観たことがないのでしょう。
サイレントヒルを観たことがあり、お手本にすれば、決して大きく間違うことのない実写化作品を作れるはずだからです。

そもそも、世の中にあふれるクソみたいな実写化作品の数々は、何を思って実写化しようとしたのでしょうか。不思議でなりません。

好きな作品を実写化したい!もっといろんな人に知ってほしい!と考えるのは、まあ分かります。でも、本当に好きならもっとまじめにやるでしょ?(普通の思考の持ち主ならば)

マイナーな作品ばかり駄作になってしまうのではなく、世界的に有名な作品でさえ、実写化はミスりまくっていますからね。

いや、というか、本当に好きな作品なら畏れ多くて実写化しようなんて絶対に思い至りません。なぜなら、実写化なんてしなくても100%完成されているのですから。

となると、原作が大して好きではないから、実写化なんて無謀な挑戦ができるのでしょう。
大して好きではないから作品に関われる。うーん、この世の腐った矛盾だ。


その点サイレントヒルは心配無用です。
原作ゲームを本当に好きな人が誠実に心を込めて制作されていますから。

実写化作品すべてのお手本であり頂点だと個人的には思っています。

「金儲けのためだけに名作を実写化(私物化)し、クソつまらないゴミに仕立て上げ、価値と名誉を損なわせ、原作ファンを愚弄する厚顔無恥な監督は、頭を垂れて蹲え平伏せよ、このサイレントヒルの前に!」


血と錆の世界の神がかった演出

今(2021年)見ても、サイレントヒルの神がかった演出には、胸が高鳴ります。
サイレントヒルという超特殊な世界観をよくもここまで表現できたなと感嘆せざるを得ません。

壁がペリペリと剥がれていき、裏世界に変容していく様は、息を呑むほど。
あの演出は、時間という概念を目で捉えられているようでとても好きですね。

雪のように灰の降り積もるサイレントヒルの街も不気味にうまく表現されており、

誰もいないのに視線を感じる
静かなのに心が落ち着かない

という「らしい」雰囲気を十二分に味わえます。

クリーチャーの造形も神がかり。
レッドピラミッド・シング(通称:△様)なんて、実際の俳優が演じているそうですから、なおさらです。
こんな筋肉&体格の男よく見つけてきたな!


原作ゲームのサイレントヒル(初代)では、学校ステージで気分が悪くなり一旦プレイを中止したことがあります。
いろんなホラーゲームをプレイしてきましたが、そんなことは後にも先にもその1度だけ…。(あれは一体何だったのだろう…)

映画でも、そのサイレントヒル特有の症状「なんだか気分が悪いような気がする」というおかしな感覚を堪能できます。
この感覚までもが再現されているなんて、すごいを通り越して恐怖としか言いようがありません。いえ、やっぱり感動かも…笑

この映画のすごいところは、大部分がCGではなく、きちんと作りこんだセット&メイクであること

だから、血と錆だらけで異形のクリーチャーにあふれ不気味でおぞましくとも、世界に愛さえ感じられるのでしょう。


子役の存在がすべてを構築している

「まだ10歳くらいの少女にどうしてそんな表情ができる?」

と、そう問いたくなるのは、主人公ローズの娘・シャロンを演じるジョデル=フェルランド

当時彼女は10歳くらい。
にもかかわらず、本当に訳が分からないレベルの演技(表情)を魅せてくれます
彼女は一体何者なのでしょうか。

物語的には、母に助けられる娘という役なので、出番は少なめ。
しかし、その存在は母の奮闘を凌駕するほど際立っています。

特にラストシーンのあの顔
あれは一体何なのだろう。
まさしく魔女なのではなかろうか…笑

絶頂するくらいに好きなシーンは、
彼女が梯子を上がってくるシーンと、
血の雨が降る中スキップをするシーン
(これらシーンは本当にすごいです。ホラー好きなら絶頂できるはず笑)

かわいさと狂気を同時にはらむことのできるキャラクターにおいて、彼女を超えることのできる者はいないでしょう。
少なくとも私は見たことがありません。

経験をもとに演じているのではなく、そこにいて表現している。
彼女は間違いなくサイレントヒルにいる
そう納得させる、いや、そう確信させるほどの存在感を彼女は醸し出しています。

ジョデル=フェルランドちゃんが出演している映画では、『ケース39』もおすすめです。
大人になった彼女を映画では一切見かけませんが、今何をしているのでしょうか…。


「子供にとって母親は神と同じなのよ」

これは主人公であるローズの言葉です。
娘のためにあの狂気の世界を奔走した彼女だからこそ言える、映画サイレントヒルを象徴するセリフだと思います。

言うまでもなくこのセリフは、暴君的支配者としてではなく、
この世に生み出した、怒りや憎しみ、悲しみ、苦痛、喜びや幸福、快楽、そして、絶望と希望、さらには死までも、
そのすべてを、そのすべてが母親によって子供にもたらされる、張本人(=神)としての意味合いを持ちます。

実存的に母がいなければ子供は産まれようがない、
母がいなければ子という概念は成立しない、
という子供視点から考えてみても、母は神としか形容できません。

故に、尊敬される存在でなければならない。
故に、慈愛に満ち守り抜く存在でなければならない。

子がいなければ母という存在もまた成立しえないのだから。

「子供にとって母親は神と同じなのよ」

我が子にとって私は神である、そんな気概が母親を母親足らしめるのかもしれません。

今作では、母ローズ、娘シャロン、超カッコいい女警官シビルなど、女性たちがメインで活躍するのも、このセリフにいかに重きが置かれてるのか想像に難くないところです。


一番好きなホラーのかたち

ホラーと一口に言っても様々なかたちがありますよね。

スプラッタからパニック、サスペンス、スリラー、SFチックなものまで、
人か怪物か痛みかシチュエーションか…。
いずれにせよ恐怖を主軸に置いたのがホラー作品。

あまりにも間口が広いために、ホラー好き同士であっても相容れないことは多々あります。

が、このサイレントヒルは原作ゲームが好きな人だけでなく、すべてのホラー好きにみてほしい傑作だと断言しましょう
(あくまでホラー好きにしかおすすめしませんけれど笑)

映像よし。
音楽よし。
役者よし。
物語よし。

恐怖があり感動もある。
退廃的世界観も堪能できる。
異形たちの造形美も味わえる。
切なさと興奮も盛り込まれている。

ホラー作品では稀有な完成度を誇る、私がホラーに望むほぼすべてが揃っている傑作映画『サイレントヒル』

ぜひ一度観ておいて損はないでしょう。
プライムビデオなら無料ですし。

ちなみに私はもう10回以上見ているほど好きです。
(もちろん、Blu-rayも所持しています)

いつかできることなら、この映画のような雰囲気を堪能できるゲーム最新作がプレイしたいものですね。


以上、『サイレントヒル』の感想でした。


コメント

  1. サイレントヒル面白いよねー
    私もホラー映画のなかで一番好きです(三年前からずっと)
    一番好きなシーンは三角様登場シーンです
    二番目はあの音楽が流れるところかな

    でもリベレーションは…

    • コメントありがとうございます。
      面白いですよね。完成度に惚れ惚れするというか、感動するというか…
      三角様はかっこいいし、音楽も良いし、
      初見では恐怖ではなく別の意味で鳥肌が立ちました笑

      リベレーションは、うん…一切触れていないことからも察せますね
      今作(1作目)の監督が作りたいものとは違う!と言って離脱したらしいので、あんな出来になってしまったそうな…

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