名作サバイバルホラー『Tormented Souls 2』のレビュー(感想と評価)です。
クラシックなサバイバルホラーゲームの傑作として人気を博した前作『Tormented Souls』から、すべての点において大幅な進化を遂げています。
ここにクラシックなサバイバルホラーゲームが完成したと言っても過言ではありません。
前作を楽しめたホラーゲームファンなら今作も期待に違うことなく楽しめるでしょう。
もちろん難解な謎解きも健在です。前作と同じく今回も攻略情報を一切見ることなく自力でエンディングに到達しました。前作超えの難解さを堪能できて実に満足です。
ホラーゲームファンだけでなく脳みそを駆使したい方にもおすすめ。
※注意※
本作は続編であり物語が直接つながっているため、必ず1作目を終えてからプレイしてください
プレイ時間:リザルト画面で12時間(実時間は24時間以上)
プラットフォーム:PS5
概要とあらすじ:全般的な感想
ワイルドバーガー病院での出来事を乗り越え、キャロライン・ウォーカーは妹のアンナと平穏な日常を取り戻そうとしていた。しかしそれから数か月の間、アンナは暴力と死の幻視に苛まれる。そして、取り憑かれたように描く不気味な絵が、恐ろしい現実として姿を現し始めるのだった。
この呪縛から妹を解放したい一心で、キャロラインはチリ南部の山奥にある人里離れた町ヴィラ・ヘッセへと向かい、そこに佇む謎めいた診療所を訪ねる。だが、穏やかなスタッフの温かい笑顔の裏には、戦慄の真実が隠されていた。そして姉妹は、まったく新しい悪夢の中心へと引きずり込まれていく……
前作のグッドエンディング後からそのまま続いて物語が始まります。前作をプレイしていないと感動と魅力が半減しますので、未プレイの方は先に必ず1作目をプレイしましょう。
『Tormented Souls 2』は、固定カメラ視点を巧みに取り入れたクラシックなスタイルのサバイバルホラーゲームです。続編にふさわしい正当進化を遂げて大幅にクオリティアップしており、古典的サバイバルホラーの理想形と言える完成度になっています。
相変わらず謎解きの難易度は容赦なく高かったですが、ここまで追い求めたものを具現化してくれるとは期待以上でした。バイオハザードやサイレントヒルに影響を受けたゲームは数あれど、ここまでの質の高いものはなかなかありません。もはや本家を超える「本物」の貫禄すら感じさせます。非常に堪能できました。前作を楽しめた方はぜひ。
前作のレビューでも書きましたが、謎解きに詰まったらすぐに攻略サイトを見てしまうような人には決しておすすめしません。脳みそを駆使して謎を解くのが本作の醍醐味ですからね。
前作からの進化点まとめ
- グラフィックの大幅な向上
- ステージ(エリア)の大幅な増加
- ストーリーボリューム倍増
- 武器の種類が大幅増加
- 動きのある戦闘が可能に
- 敵・ボスの種類の大幅増加
- クイックセレクト機能の追加
- 謎解きがより多くより難解に
- 全体的にクオリティと難易度アップ
以下、各要素についてレビューしていきます。
前作を超える秀逸なストーリー
キャロラインの眼球の行方という最大の謎を見事に回収し、すばらしい展開を魅せてくれた前作ですが、なんと今作ではそのストーリーを超える意外性と驚きある物語となっています。より難解で複雑になりつつも、曖昧になることも説明不足に陥ることもなく、またもや魅せつけてくれました。
この“仕掛け”を思いつき、ゲームシステムの中に違和感なく溶け込ませ、良質な物語として成立させる。一体どれほどの手腕と試行錯誤があれば、この芸当ができるのか。実お見事。非常にすばらしいです。やはりホラーゲームはきちんとした物語が描かれてこそだと改めて思いました。
ここまで洗練されたストーリーを堪能できるホラーゲームは類を見ません。今作で他の追随を許さない唯一無二の独自性を確立したと言えるでしょう。
チリ南部の山奥にあるヴィラ・ヘッセという町が今作の舞台ですが、修道院やショッピングモール、処理場、墓地、学校などロケーションが前作と比べて大幅に増えています。そのボリュームは体感で前作の5倍くらいでしょうか。インディーホラーゲームとは思えないほど多様で広大です。
町の各地に向かう理由も妹アンナの能力に起因しており、ただボリュームを増やすためだけでなく、ストーリーの中に組み込まれることで物語に“奥行き”をもたらしてくれています。
先入観なしにプレイするために一切の情報を絶っていた私は「おお!町を歩ける!」と感動しました。笑
ボリュームが増えることなんて続編としては当たり前のことかもしれませんが、この当たり前に最近は巡り合えてなかったですからね。
探索できる箇所が増えたことによって、後述する謎解きにも影響を与えています。謎解きに悩む以前に、そもそもアイテムが見つからないという状況に何度も遭遇しました。この点でも難易度が大きく上がっています。ロッカーや棺、死角になりそうな部分はまめに調べると良いでしょう。重要アイテムが思いもよらない場所にポンと置いてありますから。
探索箇所が多いということは、キャロラインの反応(セリフ)を見る機会も多くなるということ。前作と声優さんが変わったのもあってか、皮肉と煽りが上手い年相応のキャラクターになっています。ムービー時には煽りすぎなくらい煽ります。それどころかうるさい奴には物理的に釘を刺します。
前作の人の声のほうが個人的には好みですが、この暗い陰鬱な世界の中では、生命力や意志の強さが表現されていて良い対比だと感じました。キャロラインは今作もしっかり「主人公」しています。
容赦ない難解な謎解きは健在
謎解きが本体だった前作と比べ全体からするとその割合は減りましたが、謎解きの数は3倍以上になっています。次から次へと謎解きがあり、もはや謎解き祭り状態です。しかも、数が増えた分難易度が下がるかと思いきや、全くそんなことはありません。むしろ、難解極まる謎解きは増えています。
ですが、今回も自分のプライドをかけて、攻略サイトを一切頼ることなく自力ですべてクリアしました。そのこだわりにより、またもやプレイ時間の半分以上を苦悩し続けることになりましたが。
とはいえ、理不尽ではなく(一部除いて)、周囲から情報を集めしっかり考えて「傾向」を把握できれば解ける程度の難しさです。Tormented Soulsは、このバランス感覚が非常に優れています。
前作も謎解きが難しすぎると批判があっただろうに、今作も妥協することなく敢えて困難なものにしている。その意図をしっかり読み解くことで、見えてくるものがあります。
そう、この難解な謎解きを自力で解くという能動的な経験は、他に代えがたい喜びや充足感を与えてくれるのです。他のゲームでは味わえない作品としての強烈な印象を自分の中に残し続けます。まさに“サバイバルホラー”を体感できるのです。
この難点としては、簡単な謎解きでは満足できない体にさせられてしまうことでしょうか。笑
早くも中毒症状が出始めています。「あれ、妙だな。冷蔵庫に靴下が入ってる…」
しかし、今作には残念ながら理不尽な謎解きがありました。
さすがに“ふたご座”の形は知らないですよ。笑
キリストの誕生日くらいなら常識レベルですが、ふたご座の星の並びを知っている人っていますか?ふたご座の人でも知らないのでは?(私はしし座ですが、形なんて全く知りませんし)。
今回、攻略サイトやプレイ動画は一切見てませんが、ふたご座の形だけは調べました(悔しい)。が、それがなんと見ても分からないんですよね。実際のふたご座の形と、ゲーム内のアイテム(星座早見盤)における形が噛み合わないんですよ。これには本当に苦労しました。
一応ゲーム内にヒントはあります。それが下の画像。
面白いですよね。6つの星座どころか1つも見えません。
下のテキストは一体何を言ってるんだと、キャロラインは全く別の映像が見えているのかと、唖然としました。これは紛れもなくバグですね。確実にテクスチャーを貼り間違えています。
多くの人はここで諦めるでしょうが私は違いました。笑
よく見てみると、ちょうど順番的にふたご座は画像(壁)の右上端に並ぶだろうことが予想できるので、かろうじて銘板の右下にギリギリ星2つ見えるんですよ。これをヒントにしました。そして、おぼろげにふたご座に見えるような形に合わせたら見事正解。(その星2つが本当にふたご座の一部かは分からないんですけどね笑)
ただでさえ謎解きが難しいのにバグでさらに難解になっているので非常に疲れました。まあ、これくらいならすぐにアプデで修正が入るでしょう。
基本は残しつつクイックな戦闘が可能に
クイックセレクト機能が追加されたことにより、瞬時に武器を切り替えて戦うことできるようになりました。さらに、動きながら攻撃とリロードができるようになったことで、キャロラインが前作よりもスピーディーに動けるように進化しています。
その分、敵やボスも激しく動くようになりました。前作とは比べ物にならないくらいにダイナミックな攻撃を仕掛けてきます。そのため、前作ではほぼ使う必要のなかった回避(バックステップ)の活用機会が増えました。特に一部ボスは距離を置くだけでは避けられない攻撃をしてくるため、普段からバックステップに慣れておくと良いかもしれません。
本作ではボス戦も謎解きのひとつです。倒し方にも少し頭を使うことになります。でもそうだと知っていれば、“らしさ”を感じられて楽しめるはず。実際この一筋縄ではいかないボス戦は(少し脳みそを使う意味で)大いに楽しめました。
ギミックを使って倒すボス戦自体はよくあることですが、それを謎解きの一部と思わせることに、本作の謎解きの難解さが寄与しています。ギミックが唐突ではないんですよね。この采配はさすがだと思います。
武器の種類も大幅に増えました。
Tormented Soulsを象徴する「釘打ち機」はもちろん、ショットガン、電気銛、バールに加え、チェーンソーや自動釘打ち機に、ハンマー、ボウガンなどが登場します。今作も銃器はすべてお手製の即席デザイン。この“手作り感”はサバイバルホラーを感じられてたまらなく好きです。この点でもオリジナリティを維持してくれています。
気になったのは、今作の釘打ち機があまりにも弱いこと。距離をあけて戦える状況でないと使い物になりません。その代わり、電気銛が無限武器になっている上に、1対1であればこれだけで敵に何もさせずに倒すことができるほど強いです。
前作は弾丸(釘)の配置が完璧だと賞賛していましたが、エリアが広がり敵が増えた影響か、そのバランス取りが難しかったのでしょう。弾丸がなくなっても詰まないようにする配慮が、無限武器を増やすことだとは少し残念です。メイン武器が釘打ち機ではなく、電気銛になりましたからね。
それでもここまで多種多様な武器を用意しているのはすばらしいです。出し惜しみしてないのが伝わってきます。隠し武器もありますし周回も楽しめそうです。
名作ならではの細部へのこだわり
『Tormented Souls 2』は前作に引き続き、クラシックなサバイバルホラーゲームの理想形と言える完成度ですが、それは細かいところへの数多くの気遣いがあることによって成立しています。私が気に入った点をいくつかピックアップ。
- リロード時に弾が無い時にセリフがある
- 最後の弾を撃ち切った時の音
- エリアのインタラクト可能な場所を調べた時のセリフ・反応
- オマージュ元へのさりげないアピール
弾丸が無いのにリロードしようとすると、キャロラインが銃を覗き込みながら「damn it!」と悪態をついてくれます。これは非常に好き。ゲームにはこういう反応が欲しいんですよ。
また、最後の弾を打ち切ると「キーン!」と大きな音が鳴ります。リロードしろよという合図なんですけど、この配慮も良くできてるなと感心しました。
ストーリーのところでも書きましたが、今作ではキャロラインがなかなかに皮肉ります。たとえば、磔にされている女性の死体に向かって、「ここには女性差別はないみたい。」と言うんですよ。いやあ、もはやカッコよさすら感じますね。笑
あと今作にはオマージュ元であるバイオハザードやサイレントヒルへのさりげないアピールがあります。私が見つけたのは以下の2点。他にもあるかもしれません。サイレントヒルに関しては「向こう側」の世界自体がすでに完璧なオマージュなんですけどね。
Tormented Soulsならではの独自性を確固たるものにしつつ、オマージュ元への敬意も忘れない。この精神こそが名作を形作っている秘訣と言えます。これも繰り返しになりますが、正直、今となっては本家より「本物」だと言って過言ではありません。確実に凌駕しています。
気になった点、惜しかったところ
『Tormented Souls 2』は非常に完成度が高いですが、それでもやはり定価4,000円程度のインディーゲームです。価格からすれば十分すぎるほどのクオリティなのですが、気になった点、惜しかったところはあります。先述した星座のテクスチャー貼り間違えバグだけでなく、全体的にバグが散見されました。
先ほどのふたご座の形に合わせる星座早見盤は、ちゃんとふたご座の形にせず台座に設置してエリア移動すると消失します。謎解きアイテムが消え失せるのです。そこで詰みます。笑
また、フリーズしてアプリケーションエラーも起きました。なぜかチェーンソー使用時に高確率でなります。刃の爆ぜる音を楽しんでいるとそのまま動かなくなるのです。何もできず敵の攻撃も受け付けない状態になります。マップは開けますが。笑
あとこれは致命的。よりにもよって、グッドエンディング中に音声消失バグに遭遇しました。いや、今一番感動するところなんだけど…。これはひどかったですね。自分でアテレコしました。笑
これらに関しては早急な修正を求めます。でないとノーセーブクリアとか挑む気になれませんよ。
まあ、発売日にインディーゲームを買う洗礼の儀式のようなものなので慣れていますけどね。バグ自体は大手の大作ゲームでも普通にありますし(それこそ最近のオマージュ元でも)、大目に見ますよ。パッケージ版が出る頃にはバグはすべて無くなっているでしょう。
まとめ:サバイバルホラーゲームの理想形がここに
今すでに2周目に突入しています。
謎解きがすべて分かった後の脳内マッピングが楽しいんですよ。最短ルートを模索し脳内に最適解を構築していく“詰め将棋感”がたまらなく面白いんですよ。
これぞクラシックなサバイバルホラーゲームの醍醐味。
もうすでにバッドエンディングもグッドエンディングも見ているのに、自発的に2周目を始めてしまう。これぞ名作の証です。
周回前提の2周目を強制させるゲームは、プレイヤーが能動的に味わうこの楽しさ・喜びを全く分かっていません。どのタイトルかは言いませんが、昨今の有名どころのホラーゲームは本作を見習えよと言いたくなります。
たとえ、バグがあろうが、名作は名作なんですよ。
ちょっとしたバグごときでは長所が打ち消されない作品。それが名作と呼べる条件です。
『Tormented Souls 2』は、これぞ求めていた!と賞賛できる最高のサバイバルホラーゲームでした。
ここまで正当に順当に大幅な進化を遂げてくれるとは、実にすばらしいです。前作のレビューで書いた次回作への要望を、見事にすべて満たしてくれています(謎解きをもう少し簡単にしてくれれば…を除いてですが笑)。
今この時代に、このスタイルのサバイバルホラーがプレイできることに感謝したくなるレベルです。
過去と現在を行き来するキャロライン。
もしかすると、このゲーム自体が過去から何かを伝えるべく蘇った奇跡なのかもしれません。
今から次回作が楽しみです。もう謎解きはどんどん難解にして構いません。むしろ難しくないと物足りなくなりましたから。笑
最近のホラーゲームがしっくり来ない、なんかあまりハマれないんだよな、と嘆いている往年のホラーゲームファンには特に強くおすすめします。興味を持った方もぜひプレイしましょう。
そして、謎解きに大いに頭を悩まされてください。
以上、『Tormented Souls 2』のレビュー(感想と評価)でした。

以下、若干ネタバレ注意。
ゲーム外で気になったこと、ただの愚痴
あの、(苦悶の魂2)って何ですか?笑
洋画のダサい日本版タイトルみたいな名前勝手につけないでくださいよ。上のレビューでは完璧にスルーしましたが、これは言わずにはいられません。
“生物災害”とか“静かな丘”とかいうタイトルのホラーゲームが面白そうに見えますか?そのタイトルだったとして人気になったと思いますか?
確かにゲーム内テキストで、ラスボスにとって人間の「苦悶」や「苦痛」が重要な要素になることが判明しました。しかし、前作に無かった言葉を思いついたように突然付け加えるのやめてもらっていいですかね?
あまりにもセンスが無さすぎです。フォントもダサいし。「苦悶」っていうのも何だか解釈違いに感じますし。
たとえば、本作のゲーム難易度。「アシスト」「普通」「拷問」の3つなんですよ。しかも、その拷問の難易度表記は英語では、Tormented Modeです。整合性を取るなら、「苦悶」と訳さないとダメではないでしょうか?
それに、Soulsと複数形なんですよね。「魂」だけだと解釈が変わってしまいます。
Tormented SoulsはそのままTormented Soulsでいいんだよ。ほんと、余計なことしやがって。これもアプデで修正されないかな…。


















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