『SILENT HILL f(サイレントヒルf)』を1周プレイ(アクション「難関」/謎解き「難関」)しましたので、感じたこと・思ったことを率直にレビューします。
日本が舞台となる待望のシリーズ新作サイレントヒルfですが、ビジュアル面では過去最高に美しいゲームだと感じた一方、アクション偏重になっていて自分の想定する(理想とする)サイレントヒルではないと失望せざるを得ない場面が多々ありました。
以下は、初見でアクション難易度を「難関」で始めてしまった人間のレビューです。
これからプレイする方は必ず、アクション難易度を「物語重視」で始めてください。でないと、紛うごとなき“死にゲー”をプレイさせられるはめになりますから。
プレイ時間:1周クリアまで9時間(リトライ含めると18時間)
プラットフォーム:PS5
本作への全般的な所感
「やはり危惧していた通りになったか…」というのが一番の感想です。
アクション重視のゲーム性にすることはこれまでにないシリーズの試みとして歓迎していたのですが、予想通り<女子高生を主人公にしてしまったこと>が大きくマイナス要素になっています。
『SILENT HILL:The Short Message』のレビューでも書いた通り、Z指定のゲームで「いじめ」や「家庭内不和」、「思春期の悩み」などをテーマにしたらダメなのです。基本的にプレイヤーは全員大人ですから、それらは興醒めしてしまう要素にしかなりません。10代の女子高生だから感情移入できないとか没入できないとかではなく「白ける」のです。
矮小な悩みに対し世界があまりにも仰々しく、主人公である雛子(ひなこ)の葛藤と世界観の構築に著しい乖離があります。展開も会話も未熟すぎるがゆえに「人間」が一切感じられません。観念的で意味不明な話に終始してしまっていて理解しがたいストーリーのため、クリアしても何の感慨も湧きませんでした。
アクションについては言わずもがなです。女子高生であるにもかかわらず、雛子は、重い鈍器を軽々振り回し、俊敏なステップ回避ができます。突如現れた怪物にも臆することなく、果敢に立ち向かっていきます。10代の精神の幼さ(メンタルの弱さ)と、好戦的な姿勢(身体能力の高さ)がまるで嚙み合っていないのです。この齟齬・違和感は全体の完成度に大きく影響しています。
サイレントヒルfにおいて女子高生が主人公であることのメリットは、ビジュアル面で目を引くことくらいしかありません。
アクションを重視したゲーム性に変えておきながら、ビジュアル面の「見え方」を優先したことにより、矛盾が生じて、サバイバルホラーとして非常に質の低い物になっています。
本作をプレイして私は“サバイバルホラーゲームの限界”を感じました。
アクションについて:紛うごとなき“死にゲー”
すでに述べているように本作サイレントヒルfは、過去シリーズに比べてアクション重視のゲーム性になっています。機敏に動ける(ように見える)部分だけ見れば、アクション性に優れたホラーになったように思えますが、残念ながら、全く洗練されておらず、アクション的な楽しさや爽快感はまるで得られません。
ホラーゲーム特有の制限(シリーズ伝統のシステム)を踏襲してしまっているのが原因です。なぜアクションを押し出しておきながら、こんなゲーム性にしてしまったのでしょうか。理解に苦しみます。女子高生とは思えない動きをさせるのであれば、いっそのこと爽快なアクションができるホラーに振り切ったほうが絶対に良かったでしょう。
以下アクション面において気になったことを挙げていきます。
煩雑なゲージ管理
戦闘中に気にしないといけないゲージが、「精神力」「体力」「スタミナ」「武器の耐久度」の4つもあります。このせいで戦闘中に何度も左下に目をやることになって非常に面倒です。
精神力は、敵の攻撃を見切ったり武器固有の技を出したりするのに必要となりますが、使うほどに上限が減ります。回復させるには、食べ物(回復アイテム)を使うか、セーブ場所で祈るかしかありません。体力はそのままHPです。これがなくなると死にます。スタミナは、移動、回避、攻撃など、すべての行動で消費されるゲージで、一番管理が煩わしいです。戦闘中はすぐに尽きてその場で立ち尽くすことになる(動けなくなる)ので、敵の隙を見ながら攻撃の手を止めて、スタミナを回復させつつ戦うことになります。武器の耐久度は、最もいらない要素です。なくなると武器が壊れます。
これらに加え、当然ですが、敵の動きも注視しないといけません。こんなにもゲージ管理が煩雑な(面倒くさい)アクションに爽快感(楽しさ)がある訳がないでしょう。
特にひどいのがスタミナの仕様。あらゆるアクションで消費されるため、どの戦闘においても「待ち」状態が発生します。しかも、消費した分の回復が始まるまでが非常に遅いのです。スタミナは最優先で能力アップさせましたが、ボス戦ではそれでも足りないので結局、スタミナが一定時間消費されなくなるアイテムが必須となりました。
せめて、精神力がなければもう少しマシだったかもしれません。
<見切り>アクションの杜撰さ
敵の特定の攻撃にタイミング良く攻撃を合わせると「見切り反撃」が発生し、敵が無防備になりダメージを与えられます。敵の攻撃をタイミング良く回避すると「見切り回避」が発生し、スタミナを回復させつつ切り抜けられます。この2つの<見切り>アクションを成功させられるか否かが本作の戦闘のすべてです。
この要素を見るときちんとアクションできるように感じられますが、見切りアクション中にもダメージ判定があるという杜撰な設定です。
見切り反撃に成功しても、敵に囲まれていれば反撃する間もなく死にます。見切り回避に成功しても、連続攻撃の途中であった場合、そのまま攻撃を食らい続けて死にます。
しかも、見切り反撃のタイミングがどうあがいても無理なタイミングに用意されている敵も少なくありません。本作のアクションの醍醐味である見切りアクションを、ゲーム自体が潰してしまっています。
硬直の長さと頻度
硬直時間の長さと頻度の多さも気になりました。せっかくアクション寄りのゲーム性にしたのに爽快感がないのは、この硬直が最たる要因です。あらゆるアクション後に硬直があって動けなくなるだけでも不快なのに、ダメージリアクション中の硬直にも当たり判定があるため、一度攻撃を受けると何もできずに死ぬことが頻繁にありました。
複数の敵を相手にする時は特にこの硬直時間がネックです。途中から怪物を生み出し対複数戦を強制するモンスター(しかも超キモい)が登場しますが、遠くから毒液を吐いたり強制的に動きを止める咆哮をしたり、硬直時間を与える的確な攻撃でプレイヤーの邪魔をしてきます。1回だけでも面倒なのにこのモンスターとの戦闘は何度もあり、不快極まりありませんでした。イライラが半端なく積もります。
イライラすると言えば、天井から襲い掛かってくる敵。あれはイカれてました。あらかじめ発見できても、こちらから先制攻撃も何もできません。あと、掴み攻撃。予兆もなし仕掛けてくるうえに、掴まれたらダメージを食らうまで何もできません。QTEで反撃するくらいはできるべきでしょう。アクション重視にしておきながらこの部分への配慮が無いのは致命的です。
紛うごとなき“死にゲー”
ディレクターだかプロデューサーだか誰かが、本作を<ソウルライク>と言われることに憤慨していたようですが、いや、確かにソウルライクではないのかもしれないけれど、ほぼそれに近しい“死にゲー”になっています。
ボス戦が始まった直後の絵面はまさにそう。画面の種々のゲージ表記も相まって、もう既視感しかないんですよ。私の最も嫌いとするジャンル“死にゲー”の構図なんですよ、これは。
見た感じがそうであるだけならまだしも、スタミナ管理に腐心し続けないといけないのは、敵の動きを読んで把握しないとまともに戦えないのは、まさしく“死にゲー”以外の何物でもありません。
何度も繰り返させることを前提とするシステムで「ホラー」を堪能できると思いますか?
本作サイレントヒルfにおけるホラー感は最初の鉄パイプを拾った時点で消え失せました。
怪物に攻撃できるから怖くないのではないのです。隠れてやり過ごすとか、しゃがみ歩きで慎重に進むとか、石を投げて他におびき寄せるとか、真っ向から怪物に対峙する以外の選択肢がないから、ホラーゲーム的な恐怖(スリル)が全くないのです。初っ端から“ホラー”を放棄しているとしか思えないです。
本作は断じてホラーゲームではありません。制限だらけの窮屈なアクションを強いられる、グロテスクでショッキングなだけの“死にゲー”です。
サイレントヒルにこんなものは求めていません。
ストーリーについて:意味不明どころか…
脚本が竜騎士07なのは知っていましたが、まさかここまでそのまま『ひぐらしのなく頃に』だとは思いもしませんでした。本作のストーリーは雛見沢症候群を発症した人間の話そのものです。(もしかして、主人公の名前も雛見沢から取ってるのでは…)
本作では終始、雛子とプレイヤー(私)の温度差があり続けました。雛子の言動がとにかく痛々しいですし、一体、何を核として物語が展開されているのか分からないために、プレイヤーはずっと冷めた気分のままゲームを進めていくことになります。
声の演技が棒読みであるうえに、無駄な野暮ったいセリフばかりのせいもあり、雛子を筆頭に、本当に、誰が何について話しているのか、何をしようとしているのか最後まで意味不明でした。ただでさえ、思春期の悩みは観念的で矮小で、自己中心的で未熟なだけの妄想になりがちですが、案の定、危惧した通り、いや、想定を超えるひどいストーリー展開でした。とにかく「人間」が全くと言っていいほど描かれていないのです。
考察が必要な少し不思議で難解なストーリーなんかでは決してありません。単純に説明の足りないヘタクソな物語です。
周回前提だから2周目をプレイすればもう少し理解できる中身にはなるのかもしれませんが、だからと言って、最も重要な「1周目」を蔑ろにするのは愚か極まりありません。「周回すると真相が判明する」のではなく「周回しないと訳が分からん」のは、ゲームのシナリオとして失格です。(周回しても訳分からん場合はもう知らん!)
普通、脚本に合わせて映像を作っていくと思うんですけど、どこかの段階で誰か指摘しろよ、これ。
いくらビジュアル面で優れていようが、その優れたビジュアルで結局、この「稚拙な物語」を表現してしまっては無意味でしょう。せっかく美麗に表現されているのにもったいない。ビジュアルの無駄遣いと言う他ありません。
女はツラいよ?
思春期の葛藤や不安感をテーマとするのは百歩譲ってまあ良いとして、エンディングで「女のつらさ」を歌う曲が流れるのは論外にもほどがあるでしょう。
亭主関白な父が出てくるとは言え、メインテーマはそこではないだろ?当時、女はモノ扱いされて苦労したんですよだって?だからどうした?
それが物語と一体何の関係がある?主人公は、女子高生の雛子だろ?エンディングで流すほど重要なテーマが「不遇な女性」なのか?勘違い(本来の意味からかけ離れる意味での)フェミニストが作ったゲームなのか?(「f」がフェミニストのfだったらウケる…いや、ウケない)
不遇な扱いを受ける女性が日本においてピークだったのって60年代なんですか?日本の歴史上もっとも女性の立場や地位が低かったのって60年代ですか?
もしそうだとしたら、60年代設定にした意味が分かります。それで「不遇な女性」をメインテーマにしているのなら分かります。でも、違いますよね。(女性の参政権は戦後すぐ認められるし、雛子の姉が主人公だったらメインテーマと言える)
意味不明なんですよ。一体、何を核とした話なのか、訳が分からないんですよ。このゲームは一体何を表現したかったのでしょうか?
思春期特有の未熟さだけならまだしも、ゲーム自体も未熟じゃないですか。
あーあ、ホント、だから、こうなる気がしていたから、セーラー服着ているような女子高生を主人公にして、その内面をテーマにするなと散々言ってたのに……。
60年代に設定した理由が雰囲気のある昔ながらの村を表現するためだけだったら何の問題もなく普通に納得できたんですけどね。
幼馴染の修(しゅう)を主人公にして、サイレントヒル化した村で、雛子や友人を救い出すシンプルな話を核において、そこに思春期ならではの葛藤や恋愛事情を少し混ぜ込むだけのほうが絶対に良かったと思います。
余談。
雛子の父親は、典型的な田舎の亭主関白な頑固親父として登場しますが、「本物」はあんな丁寧な口調ではないし、声量も、暴れ方もあんなものではありません笑。茶碗を投げつけてくるくらいならまだマシ(物を投げるのはこの界隈では雑魚扱いされます笑。腕っぷしに自信がある親父は物なんか投げないんですよ)。他人に対して腰が低い内弁慶な程度の親父だったら余裕で「攻略」できます笑。要は実力(暴力ではないよ)で黙らせればいいんですよ。すると「お、おう…」という反応になりますから。まあ、10代でそれに気づくのは難しいんですけどね。方言丸出しでわめき散らす日本刀を持って暴れまわるような「本物」の身内がいないだけ、抜け道(解決の糸口)はありますよ。はは…。笑
その他気になった細かい所
「美しいがゆえに、おぞましい。」というキャッチフレーズは、ビジュアル面では確かに見事に表現されています。本作のグラフィック表現は過去最高峰の美しさでしたし、グロテスクでありながら耽美さも感じました。
しかし、細かい所を言うと、美しい「が」ゆえに、ではなく、「美しい。ゆえに、おぞましい。」のほうがしっくりきます。「が」を入れてしまうと、そこに語意が集中し、美しいとおぞましいを分断させてしまう上に、美しいんだけども…という消極的な印象を抱かせますが、「が」を入れない場合、美しいから当然おぞましいよねというニュアンスになるからです。本作をより的確に表現するなら、「美しい。ゆえに、おぞましい。」にすべきだと思いました。まあ、これは好みの問題ですけどね。
好みではない細かい所を指摘するなら、「!?」の使い方。正しい順番は!が先で?が後です。本作では何度も?が先で!が後の気持ち悪い「?!」の表記がありました。ライターとして作家として、この細かい部分を気にせずに書いてしまっていること、そして、それを誰も指摘しないこと、これだけでレベルの低さが窺い知れます。どうりで物語の質が悪い訳です。
あと、これは「細かい」部分ではないですね…。サイレントヒル恒例の裏世界ですが、本作には裏世界へ変容していく町の演出が一切ありません。雛子が気を失った時だけ現れる別世界と言った感じで、60年代の田舎町と噛み合わない和風ファンタジーな世界です。裏世界へ変貌する演出こそサイレントヒルの本体と言っても過言ではないのに、それを忘れるとは呆れますよ。せっかく日本が舞台なのに残念です。
これも細かくない欠点。アイテムの種類の多さに比べ、アイテムの所持枠が少なすぎです。そのうえ、セットしないと使えないのが煩わしい。戦闘中にセットを切り替えるのも面倒でした。プレイすれば誰もが気になることなのに、なぜ放置されているのか。いらないもの全部奉納するようにしていたら中盤以降のボス戦で詰みかけました。もうどうせならアタッシュケースでも持ってろよと。それなら管理する楽しさもありますしね。
それから気になったのは、雛子の息遣い。吐息交じりのセリフが多すぎて、割とマジでうるさいです。日本のどの作品にもありがちな「演技過多」を見ると非常に萎えます。敵に対する罵倒の言葉がバリエーション豊かなのは面白いんですけどね。ただし、強い言葉を使わせすぎ。弱く見えるぞ。「現代的な激しさ」が強調される直接的な言葉遣いは、60年代の日本にまだ残されていたであろう情緒や文学性の否定です。直情的な感情の発露には共感よりも嫌悪感が先立ちますし、作品を低俗で粗野で下品にしてしまっています。男尊女卑が横行する悪い所ばかりの時代だったか?そうではないでしょう。60年代を舞台としているのにリスペクトが足りないんですよ。否定するなら60年代よりも現代を否定するべき。
60年代へのリスペクトが足りないというか「日本」へのこだわりが全くありません。なんで日本を舞台にしたの?サイレントヒルfって日本人が本当に作ってる?と思う場面が多々あります。その代表が<平然と土足で家に上がる>こと。誰もそこに抵抗感を示しません。知り合いの家にも、まだ完全に廃墟化している訳でもないのに、ズカズカと踏み入っていきます。ここに本作のダメなところが凝縮されていると言ってもいいくらいです。細かい所まで気を配れない点が散見されすぎ。案の定、ビジュアル「だけ」アクション「だけ」話題になるようなこだわりのないゲームになってます。それはもう「ホラー」ではないんですよ。
まだあります。違和感があり引っ掛かったのが、雛子の幼馴染である修への人物評。手帳に「昭和の子供たちにありがちな、異性を冷やかしバカにする考えを持たない、珍しい人」と書かれていますが、雛子は平成か令和の人間なのでしょうか?昭和の人間が「昭和の~」などという表現は通常しないんですよ(例えば、「令和の」子供という表現を使う時は必ず、平成か昭和の子供を比較対象とする)。雛子が未来の人間であるか、明治や大正を知っている(比較対象となる時代や国を知っている)のなら別ですが。この表現が2周目以降で明かされる真相の伏線となっているのなら良いんですけど、そうでない場合、ホントに杜撰ですよ。
他にもまだまだあった気がしますが、もういいや…。
難易度について:初見は「物語重視」一択
冒頭でも書いてある通り、余計な苦労をしたくなければ、アクション難易度は「物語重視」を選んでください。
NEW GAME+で能力を引き継げますし、難易度を上げるのは能力を限界まで強化してからのほうが効率的です。どうせエンディング回収するなら周回必須ですしね。
私がなぜ「難関」で始めたのかと言うと、「物語重視」のほうの説明が、敵は弱く、アイテムは多くなります。と書いてある上に、さらに、精神力の上限が減りませんとかいうぬるい仕様になっていて、「難関」のほうの説明には、戦闘を程よく楽しみたいプレイヤー向けと書いてあったからです。これで難関を選ばないゲーマーがいるでしょうか。いや、いる訳がありません。説明に騙されました。
もう何度も書いてある通り、本作は“死にゲー”です。初見で「難関」は非常に疲れました。プレイ時間の半分以上が敵を倒せずにやり直した時間です。繰り返し死ぬとリトライ画面で難易度を下げられるようになりますが、途中で難易度下げる訳ないでしょう。
ラスボス戦はまあひどかったですね。もしかしてクリアできないんじゃねとか思いながらも何とか倒しました。とある回復アイテムが一定数以上なかったら間違いなく詰んでいたでしょう。“死にゲー”に慣れている人なら問題ないのかもしれませんけどね。
というか、NEW GAME+で周回できる前提なら、1周目はアクションも謎解きも「物語重視」しか選べないようにしておけばいいのにと強く思いました。
2周目は難易度を物語重視にして能力値を限界まで上げて、それでだいぶ楽になるのであれば、そしてかつ、非常に優秀な効果を持った御守りが今後手に入るのなら、最高難度の「五里霧中」にも挑戦しようと思いますが、そうではないなら、もう二度としたくありません。
個人的には、サイレントヒル2(リメイク)よりは楽しめたので、それで十分だということにしておきましょう。主人公の雛子自体は嫌いではありませんしね。
まとめ:見えた“サバイバルホラーゲームの限界”
日本が舞台でアクション寄りの内容になると聞いて、真っ先に思い浮かんだのが、SDKです。(SDKとは、SIRENの主人公である須田恭也のハンドルネーム)
SIRENであってサイレントヒルではないのですが、私はずっと思い描いていました。
SIRENのラストで、ヘッドホンで音楽を聴きながら、片手に日本刀、片手に宇理炎、体には手榴弾を身に付け、背中には猟銃を背負って現れるSDK。エンディングで観るだけでなく、その男を操作キャラとして屍人を屠りまくることのできるゲームを。
本作『SILENT HILL f(サイレントヒルf)』に欲しかったのは、それです。
散々苦しめられた敵に対して、圧倒的な火力を持って、薙ぎ倒し無双する。これほど爽快感を味わえることはありません。カタルシスに大いに浸れるでしょう。
昔の日本の村が舞台。不気味なモンスターが跋扈している。主人公は女子高生とは思えないほどの身体能力を持つ。ビジュアルやストーリーはひたすらに暗い鬱屈した雰囲気を放っている…。
であるならばですよ。これまで苦戦したキモイ怪物たちを軽々ぶっ殺していく展開は必須なんですよ。
ホラーであってホラーではないゲーム性にするのであれば、いや、どんなホラーであっても、ユーモアは必要です。(SIRENのラストはまさしくユーモアがないと思いつかない展開)
ましてやアクション重視にしたのであればなおさら。しかし、本作にはそんなユーモアあるような展開は全くありませんでした。
もしかしたら、他のエンディングで近しいものが見れるかもしれませんが、プレイできないと意味ないんですよね…。
終盤の雛子の意気込み的にはそれっぽいゲーム性になりかけますが、普通に殺されますからね。結局苦戦するんかい!とツッコまざるを得ませんでした。笑
何というか、ゲームとして当然の「プレイしないといけない」ことがおざなりになりすぎなんですよ。昨今の有名どころのホラーゲームは。
ビジュアルだけ優れるのであれば、動画サイトの配信(実況)を観るだけで別にいいや、と考える人間が増えるのは当たり前です。初見の「難関」の難しさを味わうことなく、「物語重視」でさらっと1周を終えてしまった場合、本作はおそらくゲームとしては何も残らないのではないでしょうか。実際このゲーム性であれば観るだけで充分かもしれません。
もし本作に優れたビジュアルがなかったら?を考えてみましょう。
そうすると、昨今あふれる2,000~3,000円のインディーホラーゲームと何ら変わりがないことに気付くはずです。ビジュアルで勝負できないインディーならではの工夫がないことを考えれば、むしろ、劣っています。
本作をプレイすることによって、“サバイバルホラーゲームの限界”が見えてしまいました。
ビジュアルがどれだけ美麗になろうと、ゲーム的には全く進化・進歩が見受けられません。いつまで煩雑で窮屈な操作性を強要しているのでしょうか。操作のしにくさが怖さにつながる時代なんてとっくに終わってますし、グラフィックがここまで写実的になった場合、ゲーム的な制限がより目に付くことになるのは必然です。
今後、サバイバルホラーゲームがどうなっていくのかを考えた場合、何もないんですよ。限界に到達してしまっている感があります。
しかし、ホラーの本質とは何か。それを分かっていれば必ず打破できます。他のレビューでもたまに触れますが、それは「思いやり」です。怖がってもらおうと真剣にプレイヤー(ゲームの場合)のことを考えて作る。それがホラーにおける本質、思いやりなのです。
見せたいものばかりが先行したビジュアルの質量を前面に出し押し付けるゲームには、それが全くありません。最近の日本の有名どころのホラーゲームは、残念ながら、すべてがそうなってしまっています。思いやりもユーモアもなくゲームとして面白くありません。
そのせいで、表面的な容易に目に見える部分だけしか評価できない、細かい所へ無頓着な、ホラーへの理解がない人間ばかりが群がることになる。そいつらプレイさえしていないですよ。なのに、そいつらに向けてゲームを作っちゃってるから、ファストファッション化してしまう。本来重視すべき核の部分が疎かになってしまう…。負のスパイラルです。
とにかく昨今のホラーには、本質を大切にすることにより湧き出でる<情緒>がありません。「人間」が皆死んでいます。だから非常に気持ちが悪い。
本作サイレントヒルfはサバイバルホラーの限界を見るためには、プレイする価値のあるゲームだと言えます。2のリメイクと違って、2周目もやる予定でいるくらいには楽しめたのは確かですから。気に食わない部分も多々ありますが、残りのエンディング次第では評価が多少は変わるかもしれませんし、もう少しやりこんでみようと思います。主人公・雛子のキャラクター、特に狂い具合に関しては気に入りましたしね。
(もう少しプレイしないと1万円分がもったいないのが一番の理由ですが…)
これからプレイする方は、「サイレントヒル」だと思ってプレイしなければ&初見で「難関」を選択しなければ、十分に楽しめるでしょう。
以上、『SILENT HILL f(サイレントヒルf)』のレビュー(感想と評価)でした。


コメント