サバイバルホラー『Tormented Souls』(PS5)の感想と評価(レビュー)です。
本作は「固定カメラ」視点のクラシックなスタイルが特徴。
視点だけでなく、戦闘もエリアも謎解きもすべてが古き良きホラーゲームを彷彿とさせます。
派手なアクションは一切なく、じっくり謎を解きながらストーリーを進めていくタイプのホラゲーなので、好きな人はとことん没頭できるでしょう。
インディーゲームならではのこだわりや思いを感じられる、細部まで丁寧なつくりのホラーゲームでした。
ただ、謎解きはもうちょっと簡単でも良かったかなあと思います。笑
プレイ時間:16時間(リザルト画面では12時間)
プラットフォーム:PS4/PS5、Switch、Steam
『Tormented Souls』概要とあらすじ
送られてきた一通の手紙から出てきた、謎めいた双子の写真。
双子に関する調査をするべくある病院へ向かった主人公キャロラインは、廃墟と化した病院に隠された秘密と、真相究明を阻止しようとする闇の力と対峙することになります。
迫りくる敵や隠された様々な仕掛け。
常に警戒を怠らず、ありとあらゆるものを使い、秘密を解き明かします。
果たして主人公は、真実を突き止め、無事に脱出を果たせるのでしょうか?
キャロラインは何者かによって「目をくり抜かれた」状態で目を覚まします。物語の冒頭から主人公の体が一部欠損しているのは、ホラーゲームとはいえ、そうそうお目にかかれません。目がないだけに
誰がやったのか?なぜ目をくり抜かれたのか?を想像しながらプレイすると、より物語に浸れるでしょう。
固定カメラ視点のホラーゲームなんて、いつ以来か分かりませんが、やはりこのスタイルはプレイしていて落ち着きますね。世界観や敵クリーチャーの造形、ストーリー展開からすると、雰囲気含めサイレントヒルに一番近いです。
しかし、戦闘や物語よりも圧倒的に「謎解き」に重点が置かれたゲームですので、<市長の銅像にバッテリー>のような不可思議な設定を楽しめないと、存分に楽しめないかもしれません。
私の場合、謎解きは嫌いではないし銅像にバッテリーが入ってようがむしろ大歓迎ですが、本作はちょっとばかし謎解きが難しすぎました。プレイ時間の3分の1(もしかしたら半分近く)は、謎解きで悩んでいたような気がします。
ですので、謎解きなんて面倒くさい!と思ってすぐに攻略サイトを見てしまうような人には全くもっておすすめできません。
逆に、謎解きパズルが大好きな人なら最高のホラーゲームのひとつとなるでしょう。
グロテスクかつ耽美的な世界観
『Tormented Souls』は、ホラーに必要不可欠である<グロテスクな描写を含みつつどこか美しい世界>を見事に表現しています。
キャロラインが訪れる廃墟と化した巨大な洋館(病院)は雰囲気あるBGMも相まって耽美的で荘厳。それでいて、なぜか通常は異物であるはずの不気味なクリーチャーたちがひどく馴染んでいるのです。
この世界観の構築はクラシックなホラーへの造詣が深くなければ決してできません。
固定カメラを上手く取り入れた視点移動は、「アングルの妙」を感じさせるほど巧み。
豪奢な洋館を大胆な角度で切り取ることで、まるで常に絵画を眺めているような雰囲気を味わえます。
また、主人公の立ち位置が画面が切り替わるたびに変化するので、プレイヤーの精神に落ち着かない浮遊感・得も言われぬ不安感を与えてきます。
これほど固定視点ならではの魅せ方を駆使したゲームは見たことがありません。
昔のサバイバルホラーを研究し尽くし、より優れた作品へと昇華させた数少ない成功例と言えるでしょう。
キャロラインの服装がリボン付き花柄ワンピースに黒のレザージャケットというのも世界観の構築に一役買っています。サバイバルホラーの主人公とは思えないほどファッショナブルなため、周囲の雰囲気と違い過ぎて浮きそうかと思いきや、これもまたひどく馴染んでいるのです。
花柄ワンピースだけでは当然不相応でしたし、ジャケットにパンツスタイルだったら平凡でした。この2つを組み合わせられるセンス。そのセンスの良さがグロテスクかつ耽美的な世界観の完成度を高めています。
そして、メイン武器となる釘打ち機は、キャロラインの孤軍奮闘ぶりや本作のオリジナリティ(&世界観)を象徴する重要なアイテムです。
本来武器ではないものを急ごしらえ的に武器にしてしまうのは、まさに「サバイバルホラー」な世界を体感できるうえに、それだけで他にはない楽しさがあります。
ホラーやサスペンスにおける<王道>ストーリー
本作は、ホラーやサスペンスにおける<王道>と言えるような良質なストーリー展開です。
主人公が主人公である必然性をしっかり出しつつ、ホラーならではの憎悪や悲哀を存分に含んだ簡潔で分かりやすい物語となっています。
キャロラインの素性自体はプレイしていて早い段階で勘づきましたが、眼球の行方については本当に予想外。
伏線回収もシンプルに爽快で、気持ちよくエンディングを迎えられました。
謎解きがメインとなるゲームにおいてはストーリーは蔑ろにされがち。ましてや、ホラーゲームだとなおさらです。
主人公の行動に必然性がなければ、主人公の動機に信念を感じなければ、「たかがゲーム」として消費されるのがオチ。
だからこそ、物語がきちんと練られているホラーはそれだけで価値があります。
謎解きが難解でありながらそれに終始せずビジュアル面もストーリー面も優れるのは、「名作」と称して間違いないでしょう。
謎解きが本体?難解なパズルの連続
すでに上述してある通り、『Tormented Souls』は謎解きパズルがゲームの根幹を成しています。「本体」と言ってもいいくらいに謎解きの割合が多いです。
プレイ時間のおよそ半分近くは、謎解きをクリアするのに頭を悩ませていました。
謎解きパズルが多いだけでなく、とにかく難解なのです。
単に頭を使うものに加え、一般教養を含む謎解き(ヒントなし)や一度使ったアイテムをまた使うパターンなどもあり、「気づけるか・気づけないか」が重要となるため、答えを導き出すのに「慣れ」や「方向性の理解」が必要となります。
後半になると、脳みそが疲れて「ひらめき値」が底を尽きかけ、危うく攻略サイトを頼りそうになったほどでした。
戦闘面は非常に楽なので、謎解きの攻略情報を見て処理してしまっては、後に残るものが何もありません。
(謎解き以外に何も無いという意味ではなく、ゲームである以上、プレイヤーが能動的にプレイできるのはそこだけになるという意味)
たとえば、クリーチャーとの戦闘やアクションがメインで、何種類もいるクリーチャーに合わせて、多彩な武器を駆使して~、というゲームであれば、難しすぎる謎解きの場合は、攻略情報を見ても支障はないでしょう。アクションがメインのゲームで爽快さを損なうほどの謎解きが紛れ込んでいたら邪魔ですから。
しかし、本作はたいていの敵がショットガン2発で倒せますし、戦闘で詰まることはまずありません。
つまり、このゲームの主となるものは「謎解きパズル」なのだと、制作者側も確実にそう提示しているのだと、容易に察せます。
その核となる部分を労せずにクリアしてしまっては、このゲーム自体プレイする意味がないです。時間を費やす甲斐がなくなってしまいます。
だから、私に残された選択は、
- このゲームをやめる(二度としない)
- 謎解きを何としてでも自力で解決する
この2択しかなかったのです。
そうして、結局、自らのプライドをかけて全部自力でクリアしました。
そのおかげで、エンディングを迎えた今は達成感とも満足感とも少し違う「充足感」に包まれています。
途中何度も葛藤しましたが、本当に攻略サイトを見ずにクリアして良かったです。
しかし果たして、プレイヤーの何%いるかどうか…笑
謎解きが異様に難しくとも、自力でクリアできた、しようと思えたのは、理不尽に難しい謎解きがなかったからでしょう。
次に触れる「アイテムの配分と配置」が絶妙なことといい、賢い制作者がきちんと丁寧に考え抜いて作ったゲームであることが分かります。
(初代SIRENを攻略見ずにクリアした私が言うのだから間違いないはず)
まあ、理不尽すれすれの難しさでしたけどね。
難しさよりも、目的と意図の分からない謎解きが多かったのは欠点かな。
絶妙なアイテム配置
本作で、謎解きの他に特筆すべきは「アイテム配置が絶妙」なこと。
弾丸(釘)と回復薬が驚くほど絶妙なタイミングで置かれています。
そろそろ弾(回復薬)ないとヤバくない?と思っているとちょうど次の部屋で見つかるのです。
何度もテストプレイし、熟考されているのでしょう。
なくなる寸前、もしくは、なくなった後敵と遭遇する前に、ちょうど手に入ります。
慌てて多めに撃ったり出合い頭の敵にダメージを受けたりなど、初見プレイヤーのミスも正確に考慮された配分です。
最後の最後、ラスボス戦まで神がかった配置でした。
弾足りるか?と思いながら、残り釘4発だけ残して倒せたのです。
敵がアイテムを落とすようなシステムでもないのにかかわらず、本当に絶妙。
同時に、敵クリーチャーの配置と数も完璧だったことになります。
ある程度ストーリーを進めると再配置されるエリアもありますが、それを含めて通り道に出てくる敵を全部倒して、快適に探索・謎解きできるようにして、それで上述したようなアイテムの残り数。
ここまで丁寧にアイテムを配置することのできているサバイバルホラーは初めてです。
多くのゲームが余りまくるか、足りなくてセーブポイントからやり直すか、のどちらかでしたからね。
本作で一番褒め称えられるべきはこの点で間違いありません。実に素晴らしいです。
総評:続編に大いに期待できる名作サバイバルホラー
『Tormented Souls』は総合的に非常に完成度の高いサバイバルホラーゲームです。クラシックなホラーゲームの完成形と言っても過言ではありません。
インディーだからこその丁寧さ。
それを十二分に感じられるゲームでした。
サバイバルホラーが好きで仕方がないという制作者の思いを形にした結果、生まれた作品であることが随所から伝わってきます。
これはこのジャンルのゲームを愛していなければ、決して作ることはできないでしょう。
この「愛」は最近のゲームには失われつつあるものです。
かろうじて本作のようなインディーゲームにはまだ残されていますが、近年の売上至上主義の名ばかりゲームからは絶対にこの愛は感じられません。
やはりホラーゲームは大衆に受け入れられないからこそいいのです。
2も発売するようなので、今から楽しみですね。
2では、グラフィックのクオリティを上げて、謎解きをもう少し簡単にして、ボリュームとコスチュームを増やしてくれたら、もう何も言うことはありません。
固定カメラ視点のホラーゲームを愛していた方なら、本作もハマること必至です。
ぜひプレイしてみてください。そして、謎解きに頭を悩まされてください。笑
以上、『Tormented Souls』のレビュー(感想と評価)でした。
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