初代PlayStation風サバイバルホラー『Alisa Developer’s Cut』のレビュー(感想と評価)です。
本作は、粗いPS時代のグラフィックに4:3の画面と、懐かしさ感じるゲームデザインが特徴の、細部までこだわりが際立つ良質なクラシックサバイバルホラー。
懐かしさだけでなく、その時代に戻って新作をプレイしているような高揚感も味わえました。
ラジコン(タンク)操作&固定カメラ視点のホラーゲームに慣れ親しんだ方なら大いに楽しめるでしょう。
プレイ時間:22時間(プラチナトロフィー取得まで)
プラットフォーム:PS5、Steam、Switch
どんなゲーム?紹介と所感
『Alisa』は、現代に蘇ったレトロサバイバルホラーです。
90年代に発売される予定だったものが諸事情で遅れ、今になってようやく発売することができました、と言われても何ら疑いようのないグラフィックが特徴。意図的に画質を落としてレンダリングしているほどこだわりが見て取れます。
洋館に彷徨う異形のモンスターを倒しながら奇妙な謎解きパズルを解いていくサバイバルホラー定番のスタイルは、非常にしっくり来ました。ビジュアルもさながらゲーム性までもその時代そのまま過ぎて、もうちょっと今風に変えても良かったのでは?と思わなくもないほど“忠実”です。
当時のぎこちなさやもどかしさ、難しさまでも再現した本作は、インディーのサバイバルホラーの中でも上位のクオリティ。
ホラーゲームをしつつ、同時に安心感(癒し)を得たい、ホラーマニアには特におすすめします。
『Alisa』独自の魅力
ダークユーモアあふれる世界観
『Alisa』は、全体的に個性の強いゲームです。日本人の感性からは決して生まれない類のユーモアやエキセントリックさが含まれています。
(近年の作品で言うと『アダムス・ファミリー』のスピンオフドラマ『ウェンズデー』がその部類でしょうか)
商品説明(あらすじ)はこちら。
エリートロイヤルエージェントのアリサは、1920年代を彷彿とさせる幻想的な世界で指名手配犯追跡しているが、突然、古くて奇妙なビクトリア朝様式の屋敷に連れ去られていることに気づく。逆さまの世界に閉じ込められたアリサは、屋敷の奇妙な機械仕掛けの人形たちに悩まされながら、脱出方法を見つけなければならない。君は、このドールハウスから生き延びて、人間性を保って脱出できるだろうか?
「人間性を保って~」に引っ掛かりを覚えますよね。この“人間性”が何を指しているのかがストーリーにおけるポイントになります。恐怖や苦痛により人間性を損なわないように気をつけろという意味なのか、手段を選ばず生き延びることを人間性を失うと例えているのか、それとも……。
本作に物語と呼べるほどのストーリー展開はありませんが、クセになるような奇怪な独特の世界に浸れます。ホラー作品に必ず出てくる死体やグロテスクなシーンが全く無いのに、サバイバルホラーに分類されているのは、その世界観によるところが大きいでしょう。
本作のダークユーモアあふれる世界観は、皮肉やブラックジョークが好きな方なら安心感すら覚えるかもしれません。
主人公アリサと豊富なコスチューム
主人公アリサは、エリートロイヤルエージェント。指名手配犯追跡中にドールハウスに囚われ、「不思議の国のアリス」風の衣装を着せられた状態で目覚めます。
アリサは要するに警察官ですが、エージェントらしからぬ風貌なうえ、少女のような声と“ほわほわ”した喋り方で、「あなたを逮捕する!」みたいなことを言います。このギャップが非常に面白いです。
コスチュームはアリス風以外にも驚くほど豊富にあり、それぞれ特有の能力を持っています。攻略状況に合わせてコスチュームを替えていると、アリサが着せ替え人形かのように見えてくるのが、まさにドールハウスと言った感じ。
往年のサバイバルホラーに出てくる洋館を彷彿とさせるドールハウスのデザインとアリサの“人形感”が相まって、本作でしか表現できない魅力とセンスを放っています。
商人から“セーブ”を買う独特のシステム
本作では敵を倒すと入手できる通貨・トゥースウィール(歯車)を使って、人形商人とアイテムの交換ができます。商品ラインアップには、武器や弾薬、回復アイテム、コスチュームなどがありますが、中でも“セーブ”を買わないとセーブできないのは面白いなと思いました。
弾薬や回復アイテムを買って攻略していくのか、高値だが防御力の高いコスチュームを買って道中を楽にするのか、それとも、セーブできるようにお金を残しておくのか。
敵を倒さないとお金が手に入らない、でも、敵を倒そうとすればダメージを食らうかもしれない……。
サバイバルホラー特有のリソース管理に頭を悩ませる仕様自体が、スリルある駆け引きとして楽しめるよう工夫されています。このアイデアは本当にすばらしいです。
豊富な武器数に、手動のエイム
本作の武器は、ハンドガンやショットガンなどの銃火器から、剣やハンマーなどの近接武器まで、コスチュームに劣らないほど豊富。武器や弾薬が世界観に合った見たこともないような名前になっているのも特徴です。
クリア後の隠し武器も多数ありますし、周回を楽しめるようにきちんと配慮されています。やっぱりサバイバルホラーは周回してこそですからね。
武器が豊富なのはいいのですが、本作はなんと武器を構えても敵に照準を合わせてくれません。そのおかげで戦闘が非常にシビアになっています。固定カメラ視点でエイムが手動なのは非常に難しかったです。バイオ1リメイクのサバイバルモードがその仕様でしたが、最初からそれを強制してくるのは、なかなかに玄人向け。攻略が無理な場合は商人から自動照準MODを買うこともできます(自動照準があっても難しいですが)。
回復アイテムの数もセーブ数も限られるので、容易に詰み状態が発生するほどシビア。ゲームの難しさも90年代風。実にホラーゲーマー仕様です。
1.↓+走るボタンでクイックターン
2.剣を構えてリロードボタンでガード
3.敵に狙いが合うと右下の照準アイコンが点灯
久々のプレイしていること自体への安心感
『Alisa』は、手順を覚えて効率良く進めていく楽しさを味わえるクラシックなサバイバルホラー定番のスタイル。周回するごとに最適化され、シビアな仕様もそういうものだとして馴染んでくるようになります。
リプレイ性、グラフィック、操作感。90年代当時のゲームの忠実な再現性を考慮すると、非常にコスパの高いゲームです。
定価2,000円未満のクオリティでは到底ありません。あり余るほどの満足感があります。本作をプレイしていて久々に「安心感」を得られました。
嬉しいことに、近々本作のスピンオフ『Alisa: The Parting』が発売されるようです。しかも、2人プレイ対応だそう。これは非常に楽しみですね。
今後も本作のようなサバイバルホラーが作られるよう、プレイという形で貢献していこうと思います。インディーホラー隆盛のこの流れを絶やしたくありませんからね。
そして、昨今の有名どころの大作ホラーゲームに足りないものが何なのか、気づくきっかけになればと思います。ホラーゲーマーが真に求めているものをぜひともこれらインディーゲームから学んでほしいものです。
「ホラーゲームはね、グラフィックが美麗なだけじゃダメなんですよ」
以上、『Alisa Developer’s Cut』のレビュー(感想と評価)でした。








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