ホラーアドベンチャー『GYLT』(PS5)の感想と評価です。
ジャケットを見てふと気になって買ってみたホラーゲームですが、久々の大当たりでした。
これほど快適にストレスなくプレイできつつ、ホラー、ステルス、パズル、アクションすべてが高水準でまとまったゲームには滅多にお目にかかれません。
ディズニー映画のようなグラフィックも魅力的。表情豊かなサリー(主人公)の動きを見ているだけでも楽しいです。
また、ステルスキルをカッコよく決められるのも魅力の一つ。クールにステルスキルができると分かった時点で私は本作を神ゲー認定しました。
全編に渡ってそつがなく優秀でありながら、ホラーとしての毒も味わえる最高のゲーム。とにかくプレイしていて楽しかったです。おすすめ。
プラットフォーム:PS4/PS5、Steam、Switch
プレイ時間:10時間
概要とあらすじ
主人公はべセルウッドに住む小さな女の子、サリー。バラ色とは言えない彼女の人生は、彼女の幼い従妹のエミリーが姿を消して以来、ますます暗い色になります。いじめっ子たちに追われたサリーは、時空が歪んだ町に足を踏み入れてしまいます。そこは彼女の心の中の恐怖と最悪の記憶が、邪悪な現実となって現れる世界です。
迷い込んだ異次元の町で従妹のエミリーが生きていると分かり、彼女を助けだし脱出するためにサリーは悪夢のような世界を奔走します。
しかし、ただ従妹だから救い出そうとしている訳ではなく、サリーにはエミリーに会わなければならない事情があるのでした…。
「いじめ」をテーマにしたストーリーです。
ゲームを始めると最初の画面で注意喚起の文言が出てきます。
と言っても、エミリーの日記で多少いじめについて触れているくらいで、いじめそのものはストーリーの根幹ではありません。
徘徊する怪物の造形や歪んで暗くなった町・学校などのロケーションから推察することはできそうですが、その意味はあまりない気がします。
いじめそのものには重点を置かないというのは分かってるなあ、と思いました。
それをメインに据えてしまうと、ただ陰鬱なだけのホラーになってしまいますからね。
あくまで、ホラーゲームとしてプレイヤーを楽しませることに重きを置かれています。
ここが最初から最後までブレないので、クオリティの高いゲームに仕上がっているのでしょう。
ホラーに必要な要素がすべて揃っている
本作『GYLT』には、「私が思うホラーゲームに必要な要素」がすべて揃っています。
ステルスとステルスキル
まず、ステルスとステルスキル。
これは個人的には必須条件です。
ステルスしている時のスリルはホラーゲームには必須。むしろ、これがなければホラーゲームとは言えないでしょう。
もちろん、GYLTにはあります。ソーダ缶を投げて怪物をおびき寄せて、その隙に横をすり抜ける。その時の緊張感。それがなんとも楽しいです。
徘徊する怪物は懐中電灯の光で弱点を照射すると倒せるので、ステルスしないとダメなのではなく、ステルスしてもいいし正面から突破することもできるというのも理想的。
戦うか戦わないか選べることによって、攻略の幅を感じられて窮屈さ(やらされている感)がなくなりますからね。
また、ステルスがあるだけでなく、ステルスキルができて、そのうえカッコいいというのはもはやそれだけで必要十分条件です。それくらい好き。
後ろからこっそり近づき攻撃すると、懐中電灯のバッテリーを消費して、怪物を光と共に一撃で雲散霧消できます。サリーのセリフとアングルが相まって、猛烈に気持ちいいです。
リソース管理が重要
次に、リソース管理が重要になること。
いくらステルスキルがカッコいいからといって、すべての怪物をキルしていると、バッテリーがなくなっていざという時に困ります。というか、困りました。笑
状況によって倒す倒さないの判断が重要となるサバイバル要素はやはりホラーゲームには必須。まあGYLTでは、バッテリーは至る所に落ちているので余程のことがない限り足りなくなることはないんですけどね。
あと、バッテリー残量が懐中電灯の側面に表示されているのは非常にセンスあるなと思いました。
腰に収めた時にはっきり見えるのですが、こういう細かい部分への配慮があるゲームをプレイしていると本当に嬉しくなります。(圭)<俺もそう思う
ユニークな世界観(ステージ)
それから、GYLTは、各エリア・ロケーションにもこだわりがあります。
ただゲーム的な都合で構築されたステージではなく、きちんと物語に即した世界が表現されているため、不気味でありながらもユニークで見ていて楽しいです。
特に、本が積み上がった廊下に出た時は「おお~」と思わず声に出してしまいました。
ビジュアルから忌避感・嫌悪感を抱かせるだけがホラーではありません。
サイレントヒルの裏世界がまさに代表しますが、気持ち悪くてもどこか魅力的な異彩を放つ妖しさが必要なのです。なぜかずっとそこにいたくなるような…。
GYLTは、攻略の面から見ても美術の面から見ても、すぐれたステージが豊富です。
行動を最適化していける
最後は、行動の最適化が図れて洗練させていく面白さがあること。
ステルス要素に付随してほしい要素です。
ステルスでは、見つかる/見つからないの判断が明確になってくると、行動効率が格段にアップします。
敵まで5mは見つからないからそこまではダッシュ、近づいたらすぐさましゃがみステルス移動。敵の動きのパターンを読み、あそこで3秒立ち止まるから、その隙に背後を抜ける。その後は、気づかれても追いつかれないからダッシュ。
などなど、こういった判断が迅速に出来るようになった時の面白さ、ワクワク感、スリルはたまらなく好きです。あとは、敢えて敵に追いかけさせて引き付けてみたりとかね。
GYLTはインディーゲームですし、スキルを覚えたり武器が何種類もあったりはしませんが、シンプルが故の面白さがこれでもかと詰まっています。
何より「プレイヤーを楽しませようとする配慮」が隅々までなされているのが、最高の要素と言えるでしょう。
「悪意」を感じない
GYLTに感じたのは、ホラーゲームとしてのクオリティの高さだけでなく、「悪意」が混入していないこと。
ボス戦が何回かありますが、初見でもすぐに攻略法が分かる絶妙な塩梅がすばらしいです。
「あー、そういうことか!」「なるほど、これを使えばいいのか!」と気づかせてくれるタイミングが実に的確。本当にちょうどよいタイミングでプレイヤーに知らせてくれます。
難しいステージやボス戦を持ってきて、プレイヤーを困らせる、あるいは、ストレスを溜めさせるホラーゲームは枚挙に暇がありません。
難しさのベクトルを履き違え、ゲームとして適切な情報を与えずに、ただ時間を浪費させる…。そんなゲームはごまんと見てきました。
しかし、GYLTは違います。
『我々の作ったゲームをぜひとも楽しんでくれ!』という制作者たちの思いさえ感じられるのです。
プレイヤーVS開発者の醜い争いを起こすような、くだらない「意地の悪さ」や「悪意」は全くありません。
本当に感動するレベル。ホラーゲームなのに、プレイしていると落ち着きます。プレイ後は充実感とともに安心して眠れるほどです。
「人を怖がらせようとする思いやり」がホラーの本質だと私は思っていますが、それを見事に表現して見せています。実にすばらしいです。
これぞエンターテインメントだ!
これが本来のゲームの在り方だ!
楽しめるゲームだけを楽しめばいい
意地の悪い気持ち悪いプレイヤーに徒労感を味わわせるばかりのクソみたいな意味不明なゲームに出くわしすぎて感覚が狂ってしまっていました。
ここ数年は特に落胆させられることが多かったですしね。
小学生の頃からプレイしてきたシリーズはいつまでも新作が発売せず、クソみたいな時代遅れのグラフィックのスピンオフでお茶を濁し集金。
中学生の頃から好きだったシリーズは、パクリしまくってくるくせに何の弁明もなく、偉そうに堂々とリメイクを繰り返すほど地の底に堕ちました。
自分の人生の少なくないほどの時間を費やしたゲーム作品が見る影もなくなっているこの現状。
落胆、がっかり、呆れるとかではなく、もはや絶望すら感じていました。
が、そこで本作の登場です。
もう見切りをつけて、モラルのない意地汚いゲーム制作者の作るクソみたいな意地の悪いゲームなんぞもう放っておいて、GYLTのようなゲームだけを歓迎し、楽しめばいいのだと思えました。
今後、ちょっとでも「意地の悪さ」を感じるような、制作者の「気持ち悪さ」が滲み出ているようなゲームはプレイしないようにしたいですね。
人生にただならぬ悪影響を及ぼしてしまうし、これ以上そいつらのために時間もお金も使ってやりたくありませんから。
総評:『GYLT』でゲームの在り方を見直すきっかけに
最後の最後まで用意周到なゲームでした。
ちょうど操作に慣れてきてコツがわかって思い通りにサリーを動かせるようになったあたりで難しめのステージが来ます。
これ以上武器やアイテムが増えないとマンネリするであろう絶妙なタイミングでストーリーが終わります。
最終局面では、ホラー定番のこれまで使ってた装備をなくす・使えなくなるスリルもあります。
プレイしていて嬉しくなってくるゲームなんていつ以来でしょう。
とにかく細部まで配慮が行き届いていました。製作者たちは本当に優秀で有能です。
『GYLT』は、ホラーゲーム好きな人だけでなく、一度でもゲームで不快な思いをしたことがあるすべてのプレイヤーにおすすめします。
もしかすると自身の中のゲームの在り方を見直すきっかけになるかもしれません。
以上、『GYLT』のレビューでした。
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