学園ジュブナイルRPG『Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ』(PS4)のレビューをします。
元がPS Vitaのゲームなので、あまり期待せずにプレイしましたが、シナリオと音楽が非常に良く、予想をはるかに超えて楽しめました。
2の発売決定で気になっている方は、予習の意味でプレイしてみてはいかがでしょうか。
食わず嫌いは損をする、ということを改めて感じる良作です。
プレイ時間:45時間
作品概要と紹介
PS Vitaで発売された『Caligula -カリギュラ-』をバージョンアップさせたのが、本作『Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ』です。
見てはいけないものほど見たくなる、してはいけないものほどしたくなる 「カリギュラ効果」をタイトルの由来とした異色の学園ジュブナイルRPG。
人々の理想が形となる仮想世界メビウスが舞台となっており、そこに囚われた主人公は「帰宅部」の仲間と共に家(現実)に帰る方法を探します。
そこに立ちはだかるのは、メビウスの創造主μ(ミュウ)とその配下「オスティナートの楽士」たち。彼らはメビウスを守るため帰宅部と敵対します。
理想の世界を壊してまで現実に帰るべきなのか?
という葛藤を描いたストーリーとなっています。
元がVitaだけあって、システムや3Dモデリングなどイマイチなところが散見されますが、シナリオと音楽は一級品です。
最初のボス撃破率が40%程度しかないのが非常にもったいない…。
せっかく始めたのならエンディングまでプレイすることをおすすめします。
2の発売も決まっており、予習としてプレイするのがいいかもしれません。
Amazonだと大幅に値下げされてますしね。
私自身、最初のほうで一度やめてしまったクチですが、2が発売されると聞いてプレイしなおしてみたところ、普通にハマりました。
2が気になっている方はぜひやってみてほしいですね。プレイして損したと感じることはまずないでしょう。
各システムの評価・感想
少し外連味のあるバトル
敵の動きを予測する未来視(イマジナリィチェイン)を駆使して、自分の行動を決めるという一風変わったバトルシステム。
必ずその通りになる訳ではなく、常に最高のビジョンが見えるので、失敗することもあります。
なかなか戦略的なバトルが楽しめそうな雰囲気は漂っていますが、難易度ノーマルで普通にストーリーを進める上では、戦略を工夫する必要はほぼありません。
未来予測→行動
未来予測→行動
と段階を踏まないといけないことにより、非常にテンポが悪くなってしまっているのも残念でした。
難易度を上げればもっと仲間との連携を活用した戦略的なバトルが楽しめるのかもしれませんが…。
バトルシステムは2に期待しましょう。
現代病理をテーマとしたシナリオ
人々の理想や願いが形となる世界メビウスに囚われるのは、現実で絶望したりひどく傷ついたりした人だけ。
それでも苦しく辛い現実に帰ることを決意した帰宅部と、
現実なんて必要ないとメビウスを守り抜こうとする楽士たち。
両者の葛藤は私たちの世界にも通ずるものがあり、考えさせられる部分が多々あります。
特筆すべきは、主人公が帰宅部だけではなく、楽士の1人になれることです。
ここが今作で一番気に入った点。
敵視点のストーリーが語られる作品は多々ありますが、並行して敵対勢力に属する主人公はあまり見たことがありません。
主人公が楽士として帰宅部と相対するのは、奇妙な興奮を味わえます。
現実に帰ろうとしつつも、理想にとどまろうとする。
この矛盾した行動の果てに主人公(プレイヤー)は何を見出すのか。
ストーリーが抜群に良かったです。最期までプレイすべき理由の一つがこれ。
ただ、実際、メビウスなんて世界が本当にあったら喜んで行くだろうなあ…笑。
徐々に愛着が湧いてくるキャラクター
帰宅部や楽士たちそれぞれの過去が明かされていく、キャラクターシナリオがあります。
案の定、みんな壮絶なトラウマやコンプレックスを抱えていますが、このほど良い重さ具合が、むしろ心地よいです。
(ここでの心地よいというのは、キャラに深みを感じられるからという理由であって、人の不幸を喜んでいる訳ではありません笑)
カリギュラは珍しくゲームにしては髪の色が地味なキャラばかり。
そのため、初めは印象に残らない薄味な感じを受けるかもしれませんが、彼らの心に触れるにつれて、どんどん好きになっていくことでしょう。
メビウスでは見た目が全員高校生になるので、現実での年齢・性別・容姿、すべて不明というのも、人物に奥行きを出す良い仕掛けになっています。
ハイクオリティなサウンドたち
メビウスは、バーチャドール(ボーカロイドのようなもの)の2人、μ(ミュウ)とアリアによって作られた世界。
楽曲を歌うことで、メビウス創造のエネルギーを維持しています。
そのためか、全編にわたって流れる音楽が実にハイクオリティ。
全曲歌詞付きでステージ(キャラクター)ごとに用意されています。
しかも、そのほとんどをμの声優・上田麗奈さんが歌っているというのが何より驚き。
各キャラクターの心情を見事に表した歌い分けは見事と言う他ありません。
シナリオもすばらしいですが、音楽はもっとすばらしいです。
楽曲だけでアルバム1枚以上の価値があるのに、それに加えゲームが楽しめるという満足度の高さ。
カリギュラのサウンドトラックは、Amazonのプライムミュージックですべて聴けます。
ゲームをやるかどうか決めるのは、一度聴いてみてからでも遅くありませんよ。
最後の選択肢で味わえるかつてない背徳感
以下、本作をプレイ予定の方は読まないほうがよいかもしれません。
当然、最後にはどちらか選ばないといけなくなります。
私は迷うことなく、楽士ルート(メビウスに残る)を選択しましたが、
これほど「嘘の映える」展開はないでしょう。
帰宅部メンバーを裏切る快感!
最後の最後で裏切る背徳感!
みんなの容赦ない恨み言、浴びせかけられる罵倒と侮蔑と失望の言葉が実に心地いい!
しかも、帰宅部みんな弱すぎ!
はははははははっ!
これはぜひとも味わうべきです。
ムービーまで用意されてるし、主人公がニヤッと笑うのも本当によく分かってるなあ、と思います笑
惜しむらくは、後から追加された展開だからか、エンディングがおまけ程度しかなかったことですかね。
それでも、久しぶりにゲームで熱くなれました。
この展開、本当に好き。
総評:帰宅部の名誉を守った稀有な良作
現実に帰るためのメンバーを「帰宅部」と名付けたのは本当にセンスがあると思います。
部活動に属していない学生を遠回しに揶揄する意味で用いられる俗語ですが、本作のおかげで帰宅部の名誉は守られ、イメージ向上につながったのではないでしょうか。
学生時代、「最速の帰宅部」の名をほしいままにしていた私にとってこれほど嬉しいことはありません。
(終礼チャイムがなると同時に誰ともあいさつを交わすことなく、全速力で走って家に帰っていました)
家に帰ることは良いことだ。
帰れる家があることは良いことだ。
家に帰ってからようやく1日が始まるのだ。
学校なんぞはおまけに過ぎない。
さあ、帰り支度を始めよう!
最初のボス撃破トロフィーの取得率が40%しかない本作。
本編クリア率に至っては、15%未満。
難しくもなんともないゲームでこれはあまりにも低すぎです。
かくいう私もフリープレイで来た時に、20分だけプレイしてやめてしまっていたので、その気持ちは分かります。
しかし!
全編クリアした今なら断言できます。
「途中でやめてしまうのはもったいないよ、このゲーム」
クリア率が低いのに、2が発売するということは、最後までプレイしたプレイヤーからの評価は総じて高いということ。もっと評価されるべきゲームです。
カリギュラ2では、今作の欠点を改善した最初からフルスロットルな展開を期待しています。
以上、『Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ』のレビューでした。
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