『Tokyo Dark(東京ダーク)–Remembrance–』(PS4)のプラチナトロフィーを取得したのでレビューします。
ダークでヘビーな部分とサブカルでコミカルな部分の入り混じった本作は、「ビジュアルノベルとミステリーアドベンチャー融合させたゲーム」。
安価なインディーゲームとしては、アニメーション・CGスチルをはじめ、文章、ストーリーにおいてもハイクオリティな完成度となっています。
プレイ時間:約15時間(プラチナ取得まで)
主人公を動かせる2Dノベルゲーム
本作『Tokyo Dark(東京ダーク)–Remembrance–』は、刑事である主人公・伊藤絢美を操作して物語を読み進めていく2D横スクロール型ノベルゲームです。
伊藤刑事は、行方不明になった相棒で恋人である田中刑事の行方を捜査していくうちに、現実離れした不可解な出来事に巻き込まれていきます。
東京を舞台にその闇を描いたストーリーで、終始陰鬱で暗い雰囲気が漂い続けるダークな部分と、日本のサブカル的なアニメチックかつコミカルな要素も混在したカオスさが特徴。
ミステリーというよりもホラー・サスペンスに近く、いくつかの選択肢と簡単な探索を行えば、一切詰まることなくエンディングを迎えられます。
寝る前の息抜きや大作ゲームの合間にやるとちょうどよいと思います。
まあ、多少のホラー展開とグロテスクさに目をつむれば、ですが…。
正直なところ、文章や物語そのものに期待している方にはあまりおすすめできません。
SPIN値と呼ばれるパラメーターが存在
- SANITY(正気度)
- PROFESSIONALISM(職業倫理)
- INVESTIGATION(調査能力)
- NEUROSIS(ノイローゼ)
の頭文字を取って、SPIN値。
主人公の選択肢や行動によってSPIN値は上下し、後々の展開に影響を及ぼします。
特にSANITY(正気度)は有名ですよね。
と言っても、実はこのSPIN値。
いろいろな出来事に応じて上下しますが、実は主人公の行動そのものには影響しません。
一部エンディングを除けば、あまり意味がないのです。
しいて挙げるならば、ステータス画面の主人公の表情が変化するくらいでしょうか。
SAN値が低い時の顔は見ものです笑(目つきヤバイ…)
ですので、1周目はお好きなように思うがままの選択・行動を取ってみてください。
バッドエンドになることはまずありませんので(おそらく)。
エンディングが11種類ある
ノベルゲームにおいてエンディングの数は重要ですよね。
その分だけ物語に奥行きがあるということですから。
が、東京ダークはトゥルーエンドらしいトゥルーエンドは存在しません。
どれもしっくりくる終わりがないのです(あくまで個人的な感想です)。
私の中で最も「らしい」と思えたのは、SAN値-100に近い状態でとある場所に行くと起こるエンディング。
それ以外は、なんだかのめり込めませんでした。
なんだろう。謎が明らかにされないままだから?無駄に壮大すぎるから?
1周目あるいは2周目にたどり着いたエンディングがトゥルーエンドだと思うのが良い気がします。
エンディングなんか気にせず、「これ選びたい!」と思う選択・行動をとるのが一番楽しめる方法でしょう。
文章は平易で読みやすい
イギリス人と日本人の夫婦が作ったゲームだからか、違和感なく文章が読めます。
洋ゲーにありがちな意味不明な文章はありません。
(小説家に和訳してもらっているそうです)
物語を読み進めるという観点でプレイするならば、十分に楽しめます。
見た瞬間に脳内に内容が入り込んでくるタイプの文章ですし、意味の分からない言い回しもないので、嫌悪感を抱くことはないでしょう。
ただ問題は、主人公・伊藤刑事の境遇にどれほど共感できるか。
刑事という時点で共感できる人は少ないかもしれないですが、それ以前に、話の壮大さに比べ主人公の悩みが矮小なのです。
そのギャップに最後まで違和感を覚え続けてしまったせいか、私は多くのエンディングに納得できなかったのかもしれません。
田中刑事との悲恋物語と思えば、しっくりくるはず…。
キャラクターのクセが強すぎる
主人公よりもモブキャラクターのクセが強すぎて胃もたれをおこすレベルです。
「よくそんなキャラ思いつくな」というキャラのオンパレード。
特に、倉庫スタッフの小林くん。
少し脳みそが足りない感をここまでうまく出せるのは一体なんなのか。不憫に思うか嘲笑の対象となるか、絶妙なラインをいっています。
そして、トロフィー取得でも障害となったのが、この小林くん。
ゴミ箱の鍵を壊すか壊さないかで取得条件の変わるトロフィーがあるのですが、バグのせいか、見事条件が逆になっていました。
余分に2周もすることになってしまったよ。
あらゆる意味で記憶に残っている倉庫スタッフの小林くん。
正直、君のせいでこのゲームに対する評価が落ちてしまったよ。
多くの人がつまずかないところでつまずいてしまうのは、君も私も同じかもしれないね…。
なんていう無意味な共感を覚えてしまいました。
主人公は常に正気ではない
モブキャラのクセが強すぎて、主人公は非常に薄味。
と思いきや、状況が状況だけに常にSAN値がマイナスなので、毒舌や悪態はもちろんのこと、平気で銃をぶっ放したり人を脅したり、○したりします。
SAN値(正気度)がプラスになるんですかね?この主人公。
かと思えば、猫に癒されたりパンケーキに舌鼓を打ったり、たこ焼きをおいしそうに頬張ったり珍しいお酒に喜んだり、いつも情緒不安定。
だからこそ、私の中であのエンディングが一番しっくり来たのでしょう。
もしかすると、主人公のイベントスチルを見るためにこのゲームはあるのかもしれません。
もっとまともな状態の主人公を操作して、事件解決する話があったら良かったのにな…。
その後、田中刑事が行方不明になれば、人物にも物語にも奥行きが出たのでは、と思います。
主人公自体は非常に好きですよ。(念のため)
推理要素はゼロ
刑事が主人公でミステリーっぽい雰囲気は漂っていますが、「犯人は誰か」という犯人捜し要素は一切ありません。
選択肢を選べるだけでストーリーに対して、プレイヤーの介入余地は皆無。
ここが一番残念に思えたところですね。
基本的に読み進めていくだけで何の苦労もないので、少し物足りません。
もっと選択肢に悩みたかったなあ。
重要そうで重要ではない選択肢
話の展開を左右する選択肢かと思いきや、何の関係もない選択肢があります。
期待外れという他ありません。
これは非常に気になりました。
話が膨らみすぎるのを恐れてカットしたんじゃないか、と邪推してしまいます。
一番悩める選択肢に意味が無いとは誰も予想できないでしょう。
『東京ダーク』レビューまとめ
ストーリーは起伏がなく何の感慨も湧かない
ゲームを進めていたら、こうなってああなってそういうふうになりましたとさ。
という感じで、こちらの想像を働かせる余白はなし。
決められたとおりに攻略していくだけです。
登場人物のバックボーンと世界観の作りこみがなく、「ちょっとよく分からない」まま終わってしまいます。
寝る前に軽くプレイするゲームとしては十分楽しめます。
ただ、物語そのものに圧倒的何かを求めている人には合わないので、あまりおすすめはしません。
2000円未満にしては非常に出来が良く作りこまれているのは間違いないですし、インディゲームの中では質が高いです。
ゲームはこれくらい気軽に楽しめるほうが疲れなくてよいのでしょう。
以上、『Tokyo Dark(東京ダーク)–Remembrance–』(PS4)のレビューでした。
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