蒸し暑い夏の夜にお勧めしたいホラー漫画シリーズ第1弾。
『死人の声をきくがよい』の感想をまとめました。
夏になると必ず読み返すほどお気に入りの漫画です。
それは、
- 主人公は幽霊が見える
- ヒロインが幽霊
という要素が含まれているから。
これらはなぜか私の琴線を刺激して止まないのです。
おそらく、人間と幽霊という、叶うことのない相容れることのない、特殊な関係が織り込まれていて、ホラーでありながら、切なさや郷愁の気持ちを感じられるからかもしれません。
ホラー×美少女
という組み合わせに格別な興味を惹かれる方にもぜひ読んでみてほしい物語となっています。
引用:Wikipedia
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『死人の声をきくがよい』の見どころ
幽霊の見える主人公・岸田純
「僕にはつまらない能力がある…」
私はこの言い回しに惚れ込み、続きを読み進めることとなりました。
死んだ人間の姿が見えることをつまらない能力と言う彼の特異性に惹かれたのです。
主人公の岸田純は、その能力のせいかひどく高校生離れした雰囲気を漂わせています。
事実、幼馴染のヒロイン・早川涼子が幽霊となって目の前に現れても、動揺する素振りも見せず、あっさりそれを受け入れているようにさえ見受けられました。
とはいえ、やはり彼も男子高校生。
1話の時点では分からない彼の人間味や人間性は、ストーリーを追うにつれて徐々に開示されていきます。
非常に興味深い主人公でした。
彼の人格も本作の魅力の一つだと思います。
物言わぬヒロイン・早川涼子
1話目からヒロインの腐った死体を拝める作品は本作以外に見たことありません笑
なかなかに衝撃的で一気に引き込まれました。
生前はよく喋りよく笑う普通の女の子だった早川涼子。
幽霊になったことでいっさい喋らなく(喋れなく?)なってしまいます。
(生前とのギャップがまた、なんというか、もうね…)
主人公の前に現れて、ジェスチャーだけで意思疎通?しようとしてきますが、その動きがまた愛らしいのです。
物言わぬアドバイザーとして主人公のずっとそばにいて、たびたび起こるピンチ(幽霊や怪異が起こす異常現象だけでなく、人間が起こす惨劇)から主人公を幾度となく救います。
美少女であることに加え、喋らないという特殊性が際立たせる彼女の存在感。
彼女はなぜ喋らないのか。
その疑問はいずれ、物語を進めていくことで不思議といつの間にか解消することになるでしょう。
言葉を話さない彼女と幽霊が見える主人公の関係に、恋愛モノでありがちなもどかしさ以上の、尊い何かを感じ取ってしまうのは、私だけではないはずです。
グロテスク&グロテスク&グロテスク
おどろおどろしい、という表現がふさわしいグロテスクで不気味な描写が、これでもかと登場するのも『死人の声をきくがよい』の魅力の一つです。
血みどろ、ぐしゃぐしゃ、バラバラは当たり前。
頭は軽快にかち割られ、首はポンポンぶっ飛び、内臓は容赦なくあふれ出し、虫は嬉々として蠢き這い回り、ためらいなく主要なキャラもひどい目に会いまくります。
スプラッタ表現だけでなく、人間の醜さも惜しみなく描写されているのがGOOD!
ああ、実にホラーだ。これぞホラーだ。
いっそ、清々しさまで感じてしまうほどです。
読んでいてなぜか痛快な気分になるのです。
ホラー好きがホラー好きのために描いたとしか思えない漫画。
(ホラー作品に慣れていない方は、読むのは諦めたほうがいいかもしれません。というか、読まないほうがいいでしょう。たぶん、眠れなくなりますから笑)
キャラクターが活き活きしている
ホラー漫画家の作者が、
「主人公の男の子が幼なじみの幽霊やいろんな女の子に囲まれてキャッキャウフフな内容の作品」
を描いたからか、死にまみれていてダークでありながらも、どこか「元気の良さ」のようなものが感じられます。
ホラー描写以上に、キャラクターの魅力を感じられるシーンが多いのです。
媚びた俗物的な可愛さではなく、素朴で素直な(人間味ある)可愛さを表現しているからかもしれません。
特に、式野会長はいろいろな意味ですごいキャラ。
主人公が所属する(させられている)オカルト研究会の会長である彼女は、自己中で自分勝手で自由奔放な性格のため、たびたび主人公を危険な目に会わせます。
が、一切反省の色さえ見せず、懲りることなく怪異や事件に首を突っ込みまくるのです。
でも、それがなんというか、良い。良いんですね。
幽霊や怪異、狂人ばかりあふれる世界観で、生のエネルギーを迸らせる彼女の人間臭さは(多少イライラさせられますが笑)、ものすごく癒しになります。
明と暗、生と死の対比が鮮やかなのも、本作がただのグロさを前面に出すホラーと一線を画す理由の一つです。
(いや、まあ、グロい描写ばかりですけどね、本当に)
感想まとめ:なぜホラーに惹かれるのか
なぜ私たちはホラーに惹かれるのでしょうか。
その答えが、『死人の声をきくがよい』には存分に含まれているような気がします。
残酷な描写に酔いしれて人々が無様に死んでいく様に興奮するのも確かにホラーの楽しみ方かもしれません。
が、そこにホラー作品の本質はないでしょう。
少なくとも私が求めるホラーは、苦痛や憎悪、恐怖、精神的嫌悪のみが支配する世界ではありません。
この腐った社会に救いとなるような一縷の望みを見出させてくれる何か、なのです。
ヒロインが一切喋らないホラー漫画『死人の声をきくがよい』。
喋らないからこそ、私たちにこの世界に、雄弁に何かを訴えかけてきているような気がします。
死人に口なし、を体現しただけなのか、それとも…?
ホラー表現に終始しない、命輝くような描写に私はひどく惹かれました。
「ホラーと美少女は切っても切り離せない関係だ!」
という考えに賛同できる方には愛読書となること間違いなしです。
以上、『死人の声をきくがよい』のレビューでした。
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