感想『ドリームハウス』~良質な物語と映像美、真に迫る演技が心にグッとくる~

ドリームハウス感想

好きな映画トップ5に入る『ドリームハウス』の感想をネタバレなしで書いていきます。
アマゾンプライムビデオに出ていることに気づいて、久しぶりに観てみました。

初めて観たのは、確か大学3回生の時。
それはまだ、VODが主流ではない頃、某レンタルDVD店で偶然見つけたのです。ジャケットを見た瞬間から「面白そう」と直感的に思ったのですが、その感覚は見事的中。
数日後にBlu-rayで買ってしまうほど、お気に入りの作品となりました。

Blu-rayを持っているのにも関わらず、プライムビデオで何度目かの視聴(おそらく7回目)。
展開が分かっていても、気づけばのめり込むほど見入ってしましました。

プライムビデオを観れる方にもそうでない方にもお勧めしたい名作です。
できれば予備知識なく観ることをお勧めします。この感想は読まないほうがいいかもしれませんね笑

『ドリームハウス』あらすじ

購入したばかりのマイホームで小説を書きながら、美しい妻と二人の娘たちとともに人生を過ごすことを決意したウィル・エイテンテン。しかし、娘が幽霊らしきものを見たとおびえたり、謎の男が自宅を覗きこんでいたり、自宅の地下に侵入した少年少女たちが怪しげなミサを行っていたり…。違和感をおぼえる奇怪な出来事が相次ぐのだった。

引用:Amazon商品説明

ジャケットを見た感じホラー映画のような雰囲気が漂っていますが、ホラーではありません。2、3回ビックリポイントがあるくらいで、グロテスクなシーンは皆無です。

サスペンス・ミステリーに分類されていますが、個人的にはヒューマンドラマにジャンルされてもいいと思える内容。
ですので、ホラーが苦手な方でも安心して観れます。

ストーリーが良くできているだけでなく、主人公であるウィル・エイテンテン役のダニエル・クレイグをはじめ、キャストたちの演技が非常にすばらしいです。
物語・映像・演技と、三拍子そろったとても質の高い映画。

ここまで読んで気になった方は、さっそく観てみましょう。
時間も1時間32分とほどよい長さで退屈することなく最後まで観れるはずです。

では、以下から感想を書いていきます。
(ネタバレなしなので抽象的な表現が多め)


「君がいればそこが幸せの家だよ」

ウィルが妻であるリビーに投げかける言葉。

「君がいればそこが幸せの家だよ」

このセリフがこの映画のすべてを表しています。

こんなセリフを奥さんに言える旦那がいるでしょうか。
しかし確かに、リビーほどの美人が妻だったなら言わずにはいれないかもしれません。むしろ、どんどん言いたい。

ウィルのリビーへの愛情の深さ、心のつながりを感じ取れる美しくもやさしいセリフです。

しかもこのあと、リビー(レイチェル・ワイズ)の照れる姿がまたかわいらしいんですよね。
「今の演技じゃなく本気で照れてたでしょ」

実際、ドリームハウスをきっかけに、ダニエル・クレイグとレイチェル・ワイズの二人は結婚します。
そんなこともあるんですねえ~。

個人単位の幸福なんて意味をなさない

「君がいればそこが幸せの家だよ」

このセリフを聞いて、正直、軽くうなったのを覚えています。
大学生当時、ホラー映画やホラーゲームばかりに触れていた私にとって、この言葉は別の意味で刺激が強すぎました。

あの時の私は、とにかく人間を肯定したくなかったのです。
この残酷な世の中で、愛だの絆だのいったい何を言っているんだ?と。
お前たちが幸せに生きている一方で、多くの人が苦しんでいるのだ、と。
もはや、個人単位の幸福なんて意味をなさない、と。

いろいろと荒んでいた私は、残酷さや恐怖の中にしか真実がないと思い込んでいたのです。
だから、ホラーを観て安心感や安堵感さえ覚えていました
(今思えば、明らかに精神を病んでいる状態なのですが、不思議と現在より頭の回転は早かった気がします)

ただお互いをそうあるように他人に見せかけるためだけの表面上の愛の言葉であれば、私はこれまでと同じように切って捨てていたでしょう。唾棄すべき言葉だと気にも留めなかったでしょう。

しかし、ウィルのこのセリフは物語の核となるだけでなく、バックボーンに適した言葉であるために納得せざるを得なかったのです。
もし、「理想の夫婦」「理想の家族」なるものがいるとしたら、まさにこの関係を指すのではないでしょうか。

男と女がたまたま出会い、偶然に性欲とタイミングが合致しただけの関係を夫婦・家族と呼ぶことの多いこの世の中。
「被害者あるいは加害者を生み出すだけの行為につながる予定調和」を肯定できないのは、思考力のある人間なら当たり前のことです。

とはいえ、私もそこまで捻くれ荒み切っているわけではありません。
肯定したいからこそ、なにかしらの意味を見出したいからこそ、葛藤しているのですから。

否定的に考えてしまうのは、おそらく私の周辺にそういった人間関係の好例がなかったせいでしょう。

自分がそういった関係を築くとしたら、「君がいればそこが幸せの家だよ」と心の奥底から言えるような関係にしたいものです。


“幽霊”の扱い方が巧い

ドリームハウスで特筆すべきなのは、「“幽霊”の扱い方」

フィクションによくある(というより一般的な認識における)幽霊の特徴と言えば、

  • 見えない
  • 触れない
  • 喋れない
  • 基本的に何もできない

あるいは、『呪怨』の伽椰子のように、

  • 非情に暴力的
  • 憎悪そのもの
  • 不条理・理不尽の塊

であることがほとんど。
(まあ、伽椰子を幽霊と呼ぶのは違うかもしれませんが)

ましてや、
「ホラーでもない作品のくせに幽霊なんて出すなよ」
「幽霊が出るとか現実味なくて萎える」
「幽霊出しちゃったら何でもありじゃん!はあ?観る気なくした」

となりかねない存在、それが幽霊です。
巷によくいる変にリアル志向の人たちにこのように思われてもおかしくありません。

幽霊を登場させるというのは、フィクション作品であってもリスキーであることがわかります。
生身の人間が積み上げてきた努力(物語の流れ)を一瞬で崩壊させる恐れがあるからです。

幽霊そのものよりも、ここに幽霊の怖さがあります(笑)

と、個人的に考えていますが、ドリームハウスに関してはそんな心配は無用でした。

私が考える理想の“幽霊”の扱い方をしています。
幽霊が出るフィクションのお手本と言ってもよいでしょう。

幽霊の存在意義

「幽霊はいるよ。見えるし、聞こえるし、触れる。でも、存在はしない。だから、科学では扱えないんだ」  by 京極堂

これは、京極夏彦著『姑獲鳥の夏』に登場する人物・京極堂のセリフです。
(細かいところは違うかもしれません)

宇宙人がいないのを証明できないように、幽霊がいないこともまた証明できません。
科学という一分野では。

ドリームハウスにおける幽霊は、この京極堂のセリフがうまく表現してあると思います。

現実世界に干渉するなんてありえないと切って捨てるよりも、科学では証明できないからこそ面白い。
そう考えるほうが、はるかにロマンがあります。

人間にとって未知の領域は、人間が想像する以上にたくさんある。
私はそう確信しています。

私が、幽霊にいてほしいと願っているのは、夢も希望もない欺瞞と暴力に満ちたこの世界で、幽霊の存在は救いになると思っているからです。

「死んだらそこで終わり」ではあまりにも虚しすぎます。

死後の世界があるかどうかという話でもなく、宗教的な話でもありません。
殺される側の無念を考えることなく、ただただ生きながらえることに執着する人間の浅ましさに辟易せざるを得ないのです。

そういえば、似たようなことを『死印』というゲームのレビューでも書いていました。

『死印』は探索型のホラーADVゲーム。粗もありますが、近年では珍しい「静かな怖さ」を感じることのできる作品です。ホラー好きの視点から、レビュー(感想と評価)をしてみました。


感想まとめ:『ドリームハウス』

ドリームハウスを観たのはもう何年も前なので、あの時の衝撃や感動を今ではうまく文章にできません。
そこにもどかしさを感じていますが、早い話、とにかく一度観てほしい、ということを言いたい訳です。
プライム会員なら無料で見れますしね!

初めて観て以来ずっと心に残り続けて、Blu-rayで定期的に観たくなる理由を再確認しました。

自分の趣味嗜好はやっぱりこっち系統だよなあ~と再認識させてくれる映画でもあります。

ミステリやサスペンスで謎やトリックの伏線回収に終始して、ストーリーがおろそかになる作品は数多いですよね。

私は叙述トリックが好きですし、伏線回収で大いに驚かせてくれる作品も好みですが、やっぱり、人間がしっかり人間をしていて、物語に奥行きのある話はもっと好きだなあ、と改めて思いました。

また、エンディング後に余韻余白があるのも非常に良いです。
これからどうなるのだろう、ウィルはどのような人生を歩むのだろうか、とキャラクターのその後に思いを馳せてしまうのは、まぎれもない名作の証でしょう。


以上、『ドリームハウス』の感想でした。