感想『ミッドサマー』~明るく牧歌的な雰囲気に潜む息苦しさと違和感、そして生々しい恐怖~

『ミッドサマー』感想評価レビュー

映画『ミッドサマー』(ディレクターズカット版)を視聴したので、感想をまとめます。
ホラー映画に分類していいのかも謎なカルト映画で、その独特の異様な空気感は唯一無二でしょう。

マニアックなホラー映画を求めている、マニアックな方にはおすすめできるかもしれません。
基本的にはネタバレなしで感想を書いていますが、ネタバレが少しでも気になる方はとりあえず視聴してみましょう。

プライムビデオで配信されています。
(30分ほど長いディレクターズカット版はNetflixにあります)

※個人的な解釈を多数捻じ込んでいるので、繊細な方は気を付けてください。あと、考察は一切していません。

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『ミッドサマー』あらすじ

家族を不慮の事故で失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人と共にスウェーデンの奥地で開かれる”90年に一度の祝祭”を訪れる。美しい花々が咲き乱れ、太陽が沈まないその村は、優しい住人が陽気に歌い踊る楽園のように思えた。しかし、次第に不穏な空気が漂い始め、ダニーの心はかき乱されていく。妄想、トラウマ、不安、恐怖……それは想像を絶する悪夢の始まりだった。

引用:公式サイト

ああ、あらすじさえ読まないほうがいいですね、これ。書いといてなんですが。
主人公たちと訳わからないまま宗教団体に招かれた感を味わったほうが作品に没入できると思います。
いや、没入はどうあがいてもできないか…?

ともかく、主人公のダニーがいろいろ拗らせているので、そこを楽しむ映画かなと個人的には感じました。
主人公はヤバイ女だなと(男性視聴者は)若干引きつつ、その主人公がまともに見えてくる宗教団体に遭遇し、でもやっぱり主人公ヤバイ奴だったな、と締めくくるのがこの映画です。

以下より、個人的解釈および感想を書いていきます。
男女の違いに言及しているのは、本作の方向性的にもそうかなと思って触れているだけで、差別的な意図は一切ありません。念のため

『ミッドサマー』個人的な解釈と感想

面倒くさい女代表の主人公

主人公ダニーとその彼氏のクリスチャンとのやり取り。
これを見た感想って男女差でますかね。どうなんでしょう。
意図的に過度に表現されているだけで、正直、こんなものなのかなという気もします。

主人公がとにかく面倒くさいんですね。

精神疾患を抱えているからそうなのではなく、元からそういう性質だから精神疾患を抱えてしまっているのでしょう。
話が通じてねえ…。
口論になったときに男が黙ってしまう理由を考えたこともないんだろうな、と。

まあクリスチャンはクリスチャンで早々にダニーと別れなかったのが悪いのですが、
そこは実際の男女関係・夫婦にも言えるので、言及するのはやめましょう。
(熟年離婚が多い理由と同じですし)

ダニーの心理状況を考えれば取り乱すのも分かります。
その状況下だったら普通誰であっても混乱するでしょう。

しかし、ダニーの場合それ以前からそうだったのは間違いありません。
クリスチャンが黙っているときに矢継ぎ早にごちゃごちゃとまくし立てるダニーは、男からすると非常に不快でした。
世の中のDVがなくならない理由はここにあるのではないかと思えるほどです。

この時、クリスチャンはどうしたらダニーを諫められるか落ち着かせられるかに頭を抱えていたはず。
話が通じないなら、話をぶった切るしかないですから。とりあえず、女性を持ち上げて良い気持ちにさせて。

本作のこの空気感の演出は絶妙です。
テーマはここにありますよ、と紹介する物語の導入として非常に秀逸でした。

無言の表現が没入感を高める

本作は無言のシーンが特徴的に多用されています。
この監督(アリ・アスター)の前作『ヘレディタリー』もそうだったのですが、日本の文学作品以上に象徴的な無言描写が多いです。

空気を読む文化と言えば、日本。
触れもしない空気を神かの如く扱う日本社会において、空気は呼吸するのに必要だという生物的な事実を超越した価値を持っています。

本作は日本人のほうが共感できるのかもしれません。
同調圧力を感じることの多い日本人なら、何も喋らないシーンがどうしても気になるはず。

よく喋る印象の強い欧米人がじっと黙っている描写に違和感を覚えるからであり、
行間を読むという小説での行為を、映画を見てるだけの視聴者にも強いてくるからです。

受け手にならざるを得ない映画なのに、能動的に心情を推し量る必要が本作にはあります。

無言の描写を多用することで、その無言の空気の中に視聴者を取り込もうとしてくるのです。

おそらくそれが没入感を高めるトラップの役割を果たしているのでしょう。
(そして、気持ちの悪さにもつながる)

残念ながら、空気を読んで生きてこなかった私には、
「何か喋れよ!」「言葉足らずだなあ」というツッコミが増える要因になっただけでしたが。

終始付き纏う息苦しさ

白夜の北欧、山奥の草原。
白装束に身を包んだ人々が楽しそうに笑いあう。

牧歌的な雰囲気なのに、終始息苦しさが付き纏います。
常にどこかしらに違和感が漂っています。

どうやってこの感覚を演出できているのか、私にはさっぱりわかりません。
BGMだけのおかげではないはず。

高い壁に覆われているのでもなく暗い地下にいるでもないのに、
この明るく開けた場所に閉じ込められているような感覚。

それはまるで学生たちの茫洋とした未来を暗示しているかのようです。

…ああ、そうか。

基本的に将来は未定で、何をしてもいい学生のはずなのに、
まったく自由を感じられず、初めから選択肢が決められているかのような閉塞感。
そして、本当はそれに抗えないと悟っていながら、それでも自由を求めることに生きがいを感じつつも、格別努力をする気が起きないという無力感。

福祉が充実した北欧だからこそより顕著になる若者のその苦悩が、本作の息苦しさや違和感の正体なのかもしれません。

物語の流れやカルト集団の教義的にもこの解釈は大きく外れてはいないかな…。

ただ、
それをどうやって映画内で表現しているのか、という疑問は残りますが。
いやはや、すごいですね。

ラストの満ち足りた顔

満ち足りたと表現するかどうかは迷いましたが、主人公の最後のあの笑顔は、…うん。

あれは邪悪と表現してもいいのでは。
やっぱりダニーは頭おかしかったな、と男性視聴者は安堵できる表情でもありますね。たぶん。

本作は女性も好きなホラー映画らしいです。
現に本作を私に勧めてきたのも女性なんですよね(後述します)。

DVや浮気した夫に復讐する物語として女性に支持されているのでしょうか?
(別にクリスチャンはダニーに暴力を振るっていないし自ら浮気もしてないけども)

「私の言うことを聞かない、気の利かないクソ旦那は汚物と一緒に消毒だあ~!」

正直、個人的には訳が分かりませんでした。
壮大すぎて理解できないとか難解すぎて理解が追い付かないとかではなく、単純に映画として面白くなかったです。

ホラー映画として観てもカルト映画として観ても、
ここだ!と言えるような場面がなく、平坦で退屈でした。
奇を衒い過ぎている感しかありません。

それなら『ヘレディタリー』のほうがホラー的には分かりやすかったですね。(悪魔崇拝とかは知らん)

まあそれでも社会風刺的な位置づけの映画であることは推察できます。
真っ先に死ぬ、いちゃつくカップル
ホラー映画では定番のテンプレですが、それを少し複雑にしただけのように感じました。

また、北欧の高齢社会におけるアンチテーゼとも取れますが、その点に関しては言及しません。

上でいろいろ空気がどうこう息苦しさが何々とか賞賛していながら、最後には面白くなかったとぶった切る。
でもそれが私の本作を観た率直な感想です。笑

ホラーにも種類がありますしホラー好きにも種類がありますからね。
本作は恐怖を喚起するシーンが生々しいものばかりで好きになれませんでした。

逃げる追われる殺されるスリルとも日本的なじわりとしたものとも違う恐怖で、高揚感を得られなかったというのが大きな理由です。

ホラー映画マニアの方は観てみてもいいのではないでしょうか。
または、カップルや夫婦で一緒に観るといいかもしれません(責任は負いかねます)。

蛇足:ミッドサマーを勧めてくる女性の心理について

私が本作よりも恐ろしかったのは、この映画を勧めてきた会社の同僚(女性)です。
なぜ彼女は数ある映画の中からこれを勧めてきたのか?
しかも、勧められた当時(2019年)はまだ日本では公開されていませんでした。

もちろん、私がホラー映画好きでけっこう観てるよという話をしたから、ホラー映画を勧めてきたんだろうことはわかります。
が、このミッドサマーを勧めてくるのは本気で理解不能です。
(『エスター』を勧めてくるならギリギリわかる。)

いや、その思考形態を慮ることはできます。
最近観たホラー映画の中からインパクトのあったものを単純に特に深い意味もなく勧めてきただけなのだろう、と。

ただ、この映画を観ているのなら、
この作品は深い意味もなく他人に勧めるようなものではない
とわかるはずなのですが笑

北欧あたりの宗教のこともこの作品のバックボーンについても私は調べていません。
映画は映画単体で完結していてほしいと思っていますし、そもそもこの映画自体にこれ以上興味を持てないからです。

キリスト教や何らかの宗教を信仰していれば、理解できる部分もあるのかもしれません。
もっと深い部分で共感できるのかもしれません。

しかし、実家に仏壇が置いてあるくらいの日本人である私にとって、その観点から感想を書くことはできないです。
(あの村の住人は所詮ドラッグに頼らなければ何もできないクソ雑魚集団としか思えませんでした)

よって、その意味ではプレーンな感想を書いてあると思います。
あくまで一般的な意見だと思います。

だからこそ問わずにはいられない。

なぜこの映画を勧めてきた?

ホラーを好む女性が少なくない理由について考える

案外、グロテスクな描写が好きな女性は多いと聞きます。
思い返してみると、小学生時に嬉々として呪怨の感想を友達に語っていたのも女の子でした。
(その友達はさぞ迷惑だっただろう)
ファッションメンヘラな傾向を女性の誰しもが持っているということの表れでしょうか。

私が小学生の時には、脳に悪影響を与えるとして、そういった娯楽は自ら敬遠していました。
バトルロワイヤルが話題になった時も近所にTSUTAYAができてみんなでホラー映画鑑賞をすることになったときも、私は断りました。

怖いからではありません。
大衆娯楽に身を染めてしまうことに本能的な恐れを抱いていたのです。
(その点では小学生の時のほうが賢かったと言える)

私がホラーに興味を持ち始めたきっかけは、たぶんバイオハザード。
といっても、バイオはジャパニーズホラー的な陰湿なものではありません。
あくまで銃で撃って戦うことができるし、ジルやクリスのキャラクター性に惹かれたからです。

特にホラー映画は、アクションが伴うゲームと違って、社会や心の闇を隠さずに曝け出しているのが特徴。
まだ未熟な精神の状態でそれらに触れれば、当然何かしらの影響を受けます。
未だ感じたことのない刺激を得られるのです。
だから、そこに虜になる。

それは性的快楽と言ってもいいでしょう。
基本的に男の子より女の子のほうが成長が早いです。
小学校高学年にもなれば、大人と同程度の思考能力は身に付けています。
(個人差と大人の思考能力の話については省略)

ですが、その思考に社会的立場が追い付いていません。
自分では大人だと思っているのに、社会一般からすればどうあがいても子供としてしか扱われない。
そのギャップに悶々とするのです。

中学生になればイキッた不良男子が騒ぎ始めるのも同じ理由。
女子はそれが男子よりも一足早い。
ただし、男子のそれと女子のそれは性質を異にします。

男子が空想や妄想で終わるのに対し、女子はあくまで現実を見つめているのです。
現実の中にその悶々とした感情の捌け口を見出そうとするのです。

刺激的な描写ばかりのホラー映画は、その捌け口にまさにうってつけ。
ホラー映画には性的描写も少なくありません。
ホラー映画を見ることによって、さも自分が大人になったかのように錯覚できるのです。

その快感が忘れられず、虜になったまま大人になるから、女性にはホラー好きが案外多いのだと思います。
(案外というのは、表立って好きだという人に通常出会わないから思いのほか多いという意味)

それから、これは超個人的な見解ですが、ホラーを幼い頃から見ていた女性は早いうちに結婚して出産している傾向にある気がします。
呪怨の感想を語っていた女子も10代のうちに子供を産んでいましたし。
ホラー映画(刺激的なシーン)を見る快感を求めた結果、当然のごとく性的快楽にたどり着いたのでしょうね。

よって、ホラーゲームばかりを好んでプレイして、さらにそれを不特定多数の誰でもいいから、とにかく見てもらいたがるような、女性配信者・女性YouTuberは相当な好き者である可能性が高いということになります。おっと、誰か来たな…

刺激に慣れることの恐怖

また、近年は子供向けのフィクション作品で「刺激の前借り」現象が起きているため、刺激の獲得が容易になっています。
具体的には、進撃の巨人や鬼滅の刃などがそれに該当。
青年誌でやるような内容を少年誌でやったために、味わったことのない刺激に少年たちがとてつもない興奮と快楽を覚える。
そして、その刺激を求めずにはいられない少年たちが群がり、爆発的な人気を誇ることになったのです。

昔で言えば北斗の拳あたりも十分グロかったですが、
ホラー作品のように一部に人気だけならまだしも、近年のそれらはほぼすべての子供に周知されていることがヤバいんですよね。

初めてプレイしたホラーゲームがVRのバイオハザード7です、なんて子供も今後は増えてくるでしょう。
その子供たちは、大人になるにつれて次から次へと刺激のレベルを上げていかないと、まともに満足できなくなります。
でも、それ以上の刺激を求め続けた先には一体何があるのでしょうか。
それはセックスやスポーツで発散できる程度のものでしょうか。

過度な刺激を幼い頃から麻薬のように乱用し続けた果てに何が生まれるのか。

子供でもスマホで簡単に様々な情報を入手できる昨今。
明確な境界線が分からなくなっている子供大人も増えすぎている今、冷静で落ち着いたきちんとした「大人」の存在がこれまで以上に重要となっています。
(子供大人とは、見た目は大人で頭脳は子供のような人間を指す)

でなければ、
異常を異常と思えなくなる異常な人間モドキ集団が社会に蔓延るでしょう。
それこそまさにカルト教団です。

他人事ではなく、異常な宗教信者は身近にあり、いつの間にか自分もその一因になっているかもしれません。

本作ミッドサマーに登場する信者たちも、一見まとも。
伝統であれば仕方がないか?決まり事なんだから当然か?みんなやっているからおかしくないのか?
と常人の常識の定義を揺さぶってきます。
意志が弱ければ、簡単に絆されてしまうでしょう。

被害者が加害者になる瞬間でもあります。
それが大問題なんですよね。

…少し話が逸れました。

答えは本作の中にある…!?

私がわざわざ気を遣われるような人間ではなかったからか、
こいつになら別に勧めても大丈夫でしょと思われたのか、
はたまた、本当に面白いと思ったからか、
それとも、もう少し女性の気持ち考えたら?という遠回しな忠告なのか、

正直分かりません。

私が考えすぎな線が一番可能性があるくらいですね。
直接訊きたくても、その女性はもう会社を辞めてるし、個人的な関わりもありません。
いや、私がここで述べたいのは、その女性の動機ではなく、女性一般の「そういった」心理の話。

さて、
なぜ元同僚の女性およびホラー好きな女性の話、刺激と快楽の話をここまで長々としてきたかは、本編を観れば男性諸君にも分かるはず

ミッドサマー
明るいのに不気味で暗く蒙昧な不快感と生々しい恐怖を味わいたい方にはおすすめです。


以上、『ミッドサマー』の感想でした。

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