実際に起こった事件〈ディアトロフ峠事件〉を基にしたホラーアドベンチャー、
『KHOLAT(ホラート) -ディアトロフ峠の惨劇-』(PS4)をレビューします。
アクション要素はなく、雪山ウォーキングシミュレーターとも言える本作ですが、美麗なグラフィックと過酷な雪山探索、次々起こる怪奇現象。
それらが恐怖と焦燥感を掻き立て、寒さを感じるほど没入感を高めていきます。
PS4、Nintendo Switch、Steamでプレイ可能
プレイ時間:12時間ほど
ディアトロフ峠事件とは?
本作をプレイするにあたって、〈ディアトロフ峠事件〉について概要だけでも把握しておくとより深く楽しめます。
様々な憶測が憶測を呼ぶ、世界的に知名度が高いネット掲示板などでも人気の事件です。
ディアトロフ峠事件(ディアトロフとうげじけん)とは、1959年2月2日の夜、当時のソ連領ウラル山脈北部で雪山登山をしていた男女9人が不可解な死を遂げたことで知られる事件である。事件は、ホラート・シャフイル山の東斜面で起こった。事件があった峠は一行のリーダーであったイーゴリ・ディアトロフの名前から、ディアトロフ峠と呼ばれるようになった。
当時の調査では、一行は摂氏マイナス30度の極寒の中、テントを内側から引き裂いて裸足で外に飛び出した(矛盾脱衣)とされた。遺体には争った形跡はなかったが、2体に頭蓋骨骨折が見られ、別の2体は肋骨を損傷、1体は舌を失っていた。さらに何人かの犠牲者の衣服から、高い線量の放射性物質が検出された。
事件は人里から隔絶した山奥で発生し生還者も存在しないため、いまだに全容が解明されず、不明な点が残されている。当時のソ連の捜査当局は「抗いがたい自然の力」によって9人が死に至ったとし、事件後3年間にわたって、スキー客や探検家などが事件の発生した地域へ立ち入ることを禁じた。
ソ連を引き継いだロシア連邦の最高検察庁は2020年7月13日、雪崩が原因との見解を示した。
引用:Wikipedia
2020年に雪崩が原因との見解を公式が示しているみたいですが、
雪崩のものとは明らかに異なる、鈍器によるであろう外傷
オレンジ色に染まった被害者の肌
検出された高い放射性物質
など雪崩だけでは説明が付かないことが多々あります。
そのため、未だに陰謀論説が根強く残っているようです。
本作は、この〈ディアトロフ峠事件〉を独自の解釈で真相の解明を試みるものとなっています。
幽霊や宇宙人はいない!
と断言するより、いるかもしれないと思ったほうが人生は間違いなく面白くなる。
そういう気持ちでプレイしてみると没入感が増すでしょう。
事件と同じようにこのゲームも難解で不可解で、全容を把握することは困難を極めますが…。
KHOLAT(ホラート)のポイント
とにかく迷う ひたすらに彷徨う
このゲーム、真冬の雪が降る寒い日にプレイすることをおすすめします。
かじかむ手でコントローラーを握れば、
ほらあなたはもう雪山にいますよ?
コンパスと地図を使って、点在するメモを集めながら雪山を探索するのが主な目的。
一見簡単そうに思えますが、遭難者気分を味わえる素晴らしい仕掛けがあります。
それは、地図を見ても自分がどこにいるのか分からないのです。
似たり寄ったりの地形やわずかな建物だけを目印に、雪山を探索しなければなりません。
しかも、不気味な怪奇現象が起きたり謎の怪物に襲われたりします。
単なるグラフィックがいいだけのインディーゲームかと思いきや、クリアまで非常に神経をすり減らしました。
プレイ時間目安が4~6時間となっていますが、確実に10時間以上は彷徨ったと思います。
プレイ中はとにかく寒かったです。足のしもやけが悪化しました。
おかげで没入感があり得ないほど高まりましたけども。笑
美麗なグラフィック
安価なインディーゲームなので、初めはそこまで期待はしていませんでした。
以前より〈ディアトロフ峠事件〉のことは知っていたので、あれをどうゲーム化したのか興味が湧いただけなのです。
が、ゲームを開始して最初の駅で私は驚嘆しました。
何このキレイなグラフィック!?本当にインディーゲームか?
そして、そこからどこに行けばいいか分からずに、スタート地点付近を30分以上うろつくこととなりました。
にもかかわらず、プレイを中断しなかったのは間違いなくグラフィックのおかげ。
また、本作はナレーションも非常に良く、没入感を高めるのに一役買っています。
イギリスの人気俳優であるSean Beanという方がナレーションをしているらしいです。全く知らんけど
というか、映画『サイレントヒル』の「クリストファー」および「ハリー」役もやっている方でした。めちゃくちゃ見たことありました。おかげでこのゲームへの印象が良くなりました。
要所要所で挟まれるナレーションが非常に良い雰囲気を醸し出してくれます。
本作は、グラフィックとナレーションだけで約8割を占めていると言っても過言ではないかもしれません。
パニックホラー&ロケーションホラー
不可解な現象がたびたび起こるし、半透明な怪物が襲ってくるし、カルト宗教の儀式跡みたいな不気味なロケーションもちらほらあります。
たしかにそれらは怖いです。
こんな雪山で謎のカルト教団か、正体不明の狂人集団、あるいは地球外生命体みたいなものがうろついていたら、当然怖い。
その点のホラー度は確実にあります。
しかし、それ以上に、
雪山で遭難する
ということの恐怖を味わえるのが本作の最大のポイントです。
想像力を大いに働かせてプレイすることをおすすめします。
部屋の暖房を消して毛布にくるまってプレイしたいゲームNO.1
能動的に探索すると夢中になれる
このゲーム、詳しい説明は何もされないので、能動的にプレイしていかないと退屈な雪山ウォーキングシミュレーターになってしまいます。
それを避けるためにはまず、ディアトロフ峠事件について軽く知識を入れ、
「これからその被害に自分も遭うかもしれない」と想像を膨らませましょう。
次に、「それでも事件の真相を解き明かしたいんだ!」
と主人公になったつもりでプレイを開始します。
最後に、プレイ開始後30分で暖房が切れるようにタイマーを設定。
これで本作を100%楽しめるはずです。
私はかじかむ手に息を吐きかけながら、早くクリアしないと死んでしまう…!
という焦燥感に駆られつつプレイしたおかげか、割と本気で雪山が恐くなりました。
まとめ:雪山を彷徨うこと自体に価値のあるゲーム
自分がどこを歩いているのか把握できないのは実にリアルで、
現実では確かにそうなんだよな、この状況で目的地に辿り着かないといけないんだよなと、
親切にプレイヤーの居場所を教えてくれるのが当たり前のゲーム的な思考に染まりきった自分の甘い考えを、『KHOLAT(ホラート)』は見事に打ち砕いてくれました。
もし実際に遭難したら?
雪山に一人放置されたら?
などの妄想を喚起するには充分なクオリティです。
美麗なグラフィック(と部屋の寒さ)も相まって、プレイ中ずっと没入感は最高潮。
ホラー要素も多々ありますが、それ以上に、生命喪失の危機が迫るという本能的根源的恐怖を体感できました。
私のように、スタート地点付近で雪山に入ってすらないのに30分以上迷子になるようなプレイヤーはさすがにいないと思いますが、
寒いのが苦手で方向音痴な方にはあまりおすすめできないかもしれません。
興味のある方はセールで見かけたらチェックしてみてはいかがでしょうか。
そして、寒い部屋で毛布にくるまってプレイしましょう。
以上、『KHOLAT(ホラート) -ディアトロフ峠の惨劇-』のレビュー(感想&評価)でした。
コメント
ゲームの楽しみ方に拘りとユーモアが有って素敵。自分も周りの環境をゲームに合わせて楽しんでみる、というやり方を試してみたくなりました。
面白いレビューでした!ありがとうございました。
コメントありがとうございます。
グラフィックがどれだけキレイになっても、視覚と聴覚だけでは限界がありますからね。
やはり五感すべて使って楽しめてこそ、真のエンターテインメントでしょう。
風邪ひかない程度に、ぜひ試してみてください!笑